重度頭痛と大脳白質病変の大きさには関連があるが、脳梗塞との相関は前兆を伴う片頭痛に限られることが、フランス国立衛生医学研究所(INSERM)神経疫学のTobias Kurth氏らの検討で明らかとなった。これまでに、片頭痛は大脳白質病変の総容積と関連することが症例対照研究や地域住民ベースの調査で示されている。さらに、前兆を伴う片頭痛は臨床的または潜在的な脳梗塞と相関するとの知見もあるという。BMJ誌2011年1月22日号(オンライン版2011年1月18日号)掲載の報告。
780人を対象とした地域住民ベースの横断的研究
研究グループは、フランス西部のナント市で実施された地域住民ベースの横断的研究である「Epidemiology of Vascular Ageing study」において、頭痛一般あるいは特定の頭痛と大脳白質病変、脳梗塞、認知機能との関連について評価を行った。
対象は、頭痛に関する詳細なデータが得られた780人(平均年齢69歳、58.5%が女性)。頭痛の評価は、「International Classification of Headache Disorders」改訂第2版に基づいて行った。MRIで大脳白質病変の大きさおよび梗塞の種類を決定し、認知機能はミニメンタルステート検査(MMSE)など複数の試験で評価した。
認知機能障害との関連は認めず
163人(20.9%)が重度頭痛(片頭痛116人、非片頭痛47人)の既往歴を報告した。片頭痛のうち前兆症状を伴うと答えたのは17人(14.7%)であった。
大脳白質病変総容積を三分位数に分けて解析したところ、総容積が下位3分の1で重度頭痛歴のない集団に比べ、上位3分の1の集団では重度頭痛歴の補正オッズ比が2.0(95%信頼区間:1.3~3.1、傾向検定:p=0.002)であった。
前兆を伴う片頭痛のみが、大脳深部白質病変の大きさ(総容積下位3分の1に対する上位3分の1の集団のオッズ比:12.4、95%信頼区間:1.6~99.4、傾向検定:p=0.005)および脳梗塞(同:3.4、1.2~9.3)と強い相関を示した。
梗塞の大部分は小脳や脳幹以外の部位に認められた。認知機能が、頭痛や脳病変の有無と関連することを示すエビデンスは確認できなかった。
著者は、「重度頭痛歴と大脳白質病変の大きさには相関関係がみられたが、脳梗塞との関連は前兆を伴う片頭痛に限られた。頭痛単独あるいは頭痛と大脳白質病変の併存が認知機能障害と関連することを示唆するエビデンスは得られなかった」とまとめている。
(菅野守:医学ライター)