ビタミンDサプリメントは、ビタミンDが正常レベルの小児、青少年の骨密度にベネフィットをもたらさないが、欠乏している場合は一定の改善効果が得られることが、オーストラリア・タスマニア大学のTania Winzenberg氏らが行ったメタ解析で明らかとなった。ビタミンDの欠乏はごく一般的にみられる状態だが、小児における潜在的なビタミンD欠乏は骨に悪影響を及ぼす可能性があるという。これまでの小児や青少年を対象としたビタミンDサプリメントの無作為化対照比較試験では、相反する結果が報告されている。BMJ誌2011年1月29日号(オンライン版2011年1月25日号)掲載の報告。
ビタミンDサプリメントのプラセボ対照無作為化試験のメタ解析
研究グループは、小児、青少年の骨密度に及ぼすビタミンDサプリメントの効果を検討し、用量などの因子による効果の変動について評価する系統的レビューとメタ解析を行った。
Cochrane Central Register of Controlled Trials、Medline、Embase などのデータベース(最終アップデート2009年8月)や主要専門誌に掲載された学会抄録を検索し、生後1ヵ月から20歳未満までの健常小児、青少年を対象に、ビタミンDサプリメントを3ヵ月以上投与して骨密度のアウトカムを評価したプラセボ対照無作為化試験を抽出した。2名の研究者が別個に試験の質やデータの評価を行った。
両群の前腕、股関節、腰椎の骨密度および全身骨塩量のベースラインからの変化率の標準化平均差を算出し、性別、思春期ステージ、ビタミンDの用量、ベースラインの血清ビタミンD濃度に関するサブグループ解析を行った。コンプライアンスや割り付けの隠蔵も、異質性の原因となる可能性がある因子として考慮された。
ビタミンD欠乏者には一定の効果
抽出された1,653試験の中から選択基準を満たした6試験がメタ解析の対象となった(プラセボ群343例、ビタミンD群541例)。
全身骨塩量、股関節・前腕の骨密度に対するビタミンDの有意な効果はみられなかった。腰椎の骨密度に対しては、わずかに有効な傾向が認められた(標準化平均差:0.15、95%信頼区間:−0.01~0.31、p=0.07)。
血清ビタミンD濃度別の比較では、高値例と低値例で効果は同等であったが、全身骨塩量については低値例で効果が大きい傾向がみられた(差の検定:p=0.09)。
血清ビタミンD濃度低値例では、全身骨塩量と腰椎骨密度に対するビタミンDの有意でおおよそ同等な効果を認めた(ビタミンD群におけるベースラインからの変化率:全身骨塩量2.6%、腰椎骨密度1.7%)。
著者は、「ビタミンDサプリメントは、ビタミンDが正常レベルの小児、青少年の骨密度にベネフィットをもたらす傾向は認めなかった」と結論し、「事前に計画されたベースラインの血清ビタミンD濃度によるサブグループ解析では、ビタミンDが欠乏した小児、青少年において、サプリメントは特に腰椎骨密度と全身骨塩量に対する臨床的な改善効果を示したが、これについてはさらなる検証が求められる」と指摘している。
(菅野守:医学ライター)