米国のホスピス利用者について、営利ホスピスと非営利ホスピスとを比較したところ、営利ホスピスでは、ケアニーズのスキルが低い患者の割合が高く、また利用期間がより長期であることが明らかになった。米国ハーバード大学医学部付属ベス・イスラエル・ディーコネス医療センター総合医療・プライマリ・ケア部門のMelissa W. Wachterman氏らが、約4,700人のホスピス利用者について調べ明らかにした。調査は、米国の公的高齢者向け医療保険メディケアが、ホスピスに対して定額日払い制の償還をしており、その“特別手当”が集中的ケアの必要がより少ない患者を選んだり、より長期の利用を生み出している可能性を調べるため、また営利、非営利ホスピスにより“特別手当”に関して違いがみられるかを調べるために行われた。JAMA誌2011年2月2日号で発表された。
営利ホスピス145ヵ所、非営利ホスピス524ヵ所の利用終了者を調査
研究グループは、2007年の全米のホスピスに関する調査「National Home and Hospice Care Survey」の結果を元に、ホスピスを利用し、そのサービスを終了した4,705人について調査を行った。主要評価項目は、利用者の診断名、営利・非営利種別にみたサービス提供の場所(自宅、ナーシングホーム、病院、ホスピス、その他)、利用期間、ホスピスの看護師などによる1日当たりの訪問回数とした。
分析の対象となった営利ホスピスは145ヵ所で利用者数は1,087人、非営利ホスピスは524ヵ所で利用者数は3,618人だった。
がん患者の割合は営利が34%、非営利が48%
利用者の診断名についてみると、がんの診断を受けていたのは、非営利ホスピスが48.4%(95%信頼区間:45.0~51.8)だったのに対し、営利ホスピスは34.1%(同:29.9~38.6)と低率だった(補正後p<0.001)。一方で、認知症の診断を受けていたのは、非営利ホスピスが8.4%(同:6.6~10.6)に対し、営利ホスピスは17.2%(同:14.1~20.8)、がんや認知症以外の診断は非営利が43.2%(同:40.0~46.5)に対し営利が48.7(同:43.2~54.1)と、いずれも高率だった(補正後p<0.001)。
サービス利用期間の中央値は、非営利ホスピスが16日に対し、営利ホスピスは20日と、有意に長期だった(補正後p=0.01)。サービスを365日超利用した人の割合も、非営利ホスピスは2.8%だったのに対し、営利ホスピスでは6.9%と高率で、逆に利用期間が7日未満はそれぞれ34.3%と28.1%と、営利ホスピスの方が低率だった(p=0.005)。
がんの診断を受けた利用者に対する、1日当たりの看護師の訪問回数の中央値は0.50回だったのに対し、認知症の利用者に対する同訪問数は0.37回、それ以外の利用者に対する同訪問数は0.41回と有意差があった(補正後p=0.002)。ソーシャルワーカーによる訪問回数についても、同様な傾向がみられた(それぞれ0.15回、0.11回、0.14回)。
なお、サービス提供場所について、営利・非営利の種別で有意差は認められなかった。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)