潜在性リンパ節転移が、乳がん患者の再発あるいは生存期間の重要な予後因子であることは、後ろ向き研究や観察研究で示唆されているが、これまで、センチネルリンパ節における潜在性転移と臨床転帰の関連について、前向きに検討した無作為化試験のデータはなかった。米国バーモント医科大学のDonald L. Weaver氏らは、5,611例の乳がん女性を、センチネルリンパ節生検+腋窩郭清群と、センチネルリンパ節生検単独群に無作為に割り付け全生存率などに関する両群の同等性を検証した試験「NSABP試験B-32」のコホート解析を行い、潜在性転移の臨床的重要性について評価を行った。NEJM誌2011年2月3日号(オンライン版2011年1月19日号)掲載より。
センチネルリンパ節生検陰性例の潜在性転移例は15.9%
試験では、各群に割り付けられた被験者のうち、初回検査で病理学的にセンチネルリンパ節陰性と判定された被験者3,989例(71.1%)は、センチネルリンパ節のパラフィン包埋組織ブロックを中央に集約し、組織ブロックのより深部の潜在性転移の有無についての追加的評価が行われた。組織ブロックが入手できたのは3,887 例。組織上の十分に距離を置いた2ヵ所で、サイトケラチンのルーチン染色と免疫組織化学染色の両方が行われた。
これら追加的評価の所見は、治療を担当する医師には知らされなかった。そのため臨床的治療の決定に追加的評価の結果は用いられていない。
なお本試験では、後ろ向き試験における重大な限界要因である最大径2mm超のマクロ転移例について、初回検査時にすべて検出されるようになっていた。
解析の結果、生検で陰性と判定された両群計3,887例のうち、潜在性転移は15.9%(95%信頼区間:14.7~17.1)で検出された。Log-rank検定の結果、潜在性転移が検出された患者と検出されなかった患者との間で、全生存期間(P=0.03)、無病生存期間(P=0.02)、無遠隔転移期間(P=0.04)のいずれにおいても有意差が示された。補正ハザード比は、死亡1.40(95%信頼区間:1.05~1.86)、全転帰イベント1.31(同:1.07~1.60)、遠隔転移1.30(同:1.02~1.66)だった。
陰性例への追加的評価による、転移検出例と非検出例との5年全生存率の差はわずか
一方で、Kaplan-Meier推定値で算出した5年全生存率は、潜在性転移が検出された患者は94.6%、検出されなかった患者は95.8%だった。
研究グループは、「潜在性転移は、センチネルリンパ節陰性患者の独立予後因子ではある。しかしながら5年時点の転帰の差は1.2ポイントとわずかだった。センチネルリンパ節生検陰性の乳がん患者に対する、免疫組織化学的分析などの追加的評価は臨床的ベネフィットが示されなかった」と結論している。
(朝田哲明:医療ライター)