冠動脈バイパス術(CABG)後24時間以内のクレアチンキナーゼMB(CK-MB)分画やトロポニン値の上昇は、中・長期死亡率増大の独立予測因子であることが明らかになった。CK-MB分画は最も強力な独立予測因子で、術後30日から1年後の死亡率は、正常値上限を超え5ポイント増加するごとに、死亡リスクは1.17倍程度増大するという。米国マウントサイナイ大学のMichael J. Domanski氏らが、1万9,000人弱対象の大規模メタ解析の結果明らかにしたもので、JAMA誌2011年2月9日号で発表した。
30日・1年死亡率、CK-MB分画増加に伴い増大
研究グループは、CABGについて行われた無作為化試験やレジストリ試験で、術後24時間以内に心臓マーカーの測定を行った7試験、追跡期間3ヵ月から5年にわたる、被験者合計1万8,908人の分析を行った。
結果、死亡率はCK-MB分画増加に伴い単調に増大する傾向が認められた。具体的には、30日死亡率が、CK-MB分画0~1未満の群では、0.63%、1~2未満では0.86%、2~5未満0.95%、5~10未満では2.09%、10~20未満では2.78%、20~40未満・40以上では7.06%だった。
CK-MB分画は、30日死亡率に関する最も強力な独立予測因子であり、試験開始時点でのその他のリスク因子について補正後も有意なままだった(x2=143、p<0.001)。正常値上限を超え5ポイント増加ごとのハザード比は1.12(95%信頼区間:1.10~1.14)であった。
この傾向は、術後30日死亡率について最も強くみられたが、その後も術後1年まで継続した(x2=24、p<0.001)。正常値上限を超え、毎5ポイント増加によるハザード比は1.17(95%信頼区間:1.10~1.24)であった。
血中トロポニン値、50ポイント増加ごとに30日死亡リスクは1.28倍に
また血中トロポニン値も、増加に伴い死亡率の増加が認められた。血中トロポニン値が正常値上限を超え50ポイント増加することによる、術後30日死亡率に関するハザード比は1.28(95%信頼区間:1.23~1.33)、術後30日~6ヵ月死亡率に関するハザード比は1.15(同:1.10~1.21)だった。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)