収縮期血圧は世界的に微減するも、低~中所得国で高い傾向に

提供元:ケアネット

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公開日:2011/02/24

 



世界全体の平均収縮期血圧(SBP)は1980年以降わずかに低下傾向にあるが、その変動には地域や国によって大きなばらつきがあり、近年は低~中所得国でSBPが高い傾向がみられることが、アメリカ・ハーバード大学公衆衛生大学院疫学科のGoodarz Danaei氏らによる系統的な解析で判明した。血圧が食事やライフスタイル、薬理学的決定因子に及ぼす影響を解明して介入の優先順位を決め、国の健康プログラムを評価するには血圧の変動に関するデータが不可欠だが、世界規模で実施された血圧の変動傾向に関する解析はほとんどないという。Lancet誌2011年2月12日号(オンライン版2011年2月4日号)掲載の報告。

1980~2008年の199の国と地域、540万人のデータを解析




研究グループは、1980~2008年までの199の国と地域における25歳以上の成人の平均SBPの変動傾向を推定するために系統的な解析を行った。

既報または未公開の健康診断や疫学試験を調査し、786ヵ国・年、540万人分のデータを収集した。ベイジアン階層モデルを用いて、年齢、国、年度別の平均SBPをそれぞれ男女別に推算し、各調査・試験が当該国の典型を示すものか地域限定的なものかを明らかにした。

2008年の世界の平均SBP:男性128.1mmHg、女性124.4mmHg




2008年の世界全体の年齢調整平均SBPは、男性が128.1mmHg(95%不確かさ区間:126.7~129.4)、女性は124.4mmHg(同:123.0~125.9)であった。1980~2008年までの世界全体のSBPは、男性が10年ごとに0.8mmHg(同:−0.4~2.2)低下し(真の低下となる事後確率=0.90)、女性は1.0mmHg(同:−0.3~2.3)低下した(事後確率=0.93)。

西ヨーロッパやオーストラリアでは女性のSBPが10年ごとに3.5mmHg以上低下していた(事後確率≧0.999)。男性のSBPは、北米の高所得国で10年ごとに2.8mmHg(95%不確かさ区間:1.3~4.5)低下し(事後確率>0.999)、次いで西ヨーロッパとオーストラリアで10年ごとに2.0mmHg以上低下していた(事後確率>0.98)。

オセアニア、東アフリカ、南アジア、東南アジアでは男女ともに、また西アフリカでは女性のみSBPが上昇しており、男性は10年ごとに0.8~1.6mmHg(事後確率:0.72~0.91)、女性は10年ごとに1.0~2.7mmHg(事後確率:0.75~0.98)の上昇がみられた。

女性のSBPが最も高かったのは東・西アフリカ諸国で、平均135mmHg以上であった。男性の場合はバルト海沿岸諸国と東・西アフリカ諸国でSBPが最高域にあり、平均値は138mmHg以上に達していた。西ヨーロッパ地域では、男女ともに高所得国でSBPが最も高かった。

著者は、「平均して、世界全体のSBPは1980年以降わずかに低下していたが、その変動には地域や国によって大きなばらつきがみられた。最近の傾向としては、低~中所得国でSBPが高かった」と結論し、「低~中所得国をターゲットに地域住民ベースまたは個別化された有効な介入を行うべきである」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)