米国高齢者の退院後30日以内の再入院率、黒人患者は白人患者の1.13倍

提供元:ケアネット

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公開日:2011/03/01

 



高齢者の急性心筋梗塞、うっ血性心不全、肺炎による入院について、人種および病院間の退院後30日以内の再入院率を調べたところ、黒人は白人に比べ1.13倍に上り、また黒人患者の割合が高い病院の方が、そうでない病院よりも高率だったことが明らかになった。米国・ハーバード大学公衆衛生大学院ヘルス政策マネジメント部門のKaren E. Joynt氏らが、米国の高齢者向け公的医療保険であるメディケアの出来高払い制プランに加入する、310万人以上のデータを分析し明らかにしたもので、JAMA誌2011年2月16日号で発表した。

約4,300~4,600病院、316万件の退院について調査




Joynt氏らは、人種間で再入院率の格差があるのかどうか、またそれが治療を受けている場所(病院特性)と関連するかどうかを目的に、メディケアデータの中から、2006~2008年にかけて、急性心筋梗塞、うっ血性心不全、肺炎のいずれかにより米国の病院に入院した人を対象に、退院後30日以内の再入院について調査を行った。調査の背景には、再入院率の人種間格差の実態と、人種が再入院率を減らす要因となるのかどうかを明らかにする目的があった。

調査対象となった退院件数は316万3,011件、うち黒人患者は8.7%の27万6,681件、白人患者は91.3%の288万6,330件だった。

調査が行われた病院数は、疾患により異なり、4,322~4,588ヵ所だった。各病院におけるメディケア加入の黒人患者の割合を調べ、同率が上位10%の病院を対象に「少数民族サービス提供病院」(マイノリティ病院)、それ以外を「非少数民族サービス提供病院」(非マイノリティ病院)と定義し分析した。

マイノリティ病院の黒人患者、非マイノリティ病院の白人患者に比べリスクは1.35倍




結果、3疾患による退院後30日以内の再入院率は、白人が22.6%に対し黒人は24.8%と、黒人患者の方が有意に高率だった(オッズ比:1.13、95%信頼区間:1.11~1.14、p<0.001)。

病院別の分析では、マイノリティ病院が25.5%で、非マイノリティ病院22.0%に比べ、有意に高率だった(オッズ比:1.23、同:1.20~1.27、p<0.001)。

急性心筋梗塞の退院後30日以内再入院率について詳しくみたところ、参考値とした「非マイノリティ病院での白人患者の同率」20.9%に対し、最も高率を示したのは「マイノリティ病院での黒人患者の同率」26.4%で、オッズ比は1.35(同:1.28~1.42、p<0.001)だった。一方で、「マイノリティ病院での白人患者の同率」は24.6%で、オッズ比は1.23(同:1.18~1.29、p<0.001)だった。また、「非マイノリティ病院での黒人患者の同率」は23.3%で、オッズ比は1.20(同:1.16~1.23、p<0.001)だった。

うっ血性心不全や肺炎についても、同様の傾向が認められた。

(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)