埋め込み型無線血行動態モニタリング、心不全患者の入院率を大幅低減

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2011/03/03

 



心不全患者では、埋め込み型の無線血行動態モニタリングシステムによる肺動脈圧のモニタリングにより入院率が大幅に改善され、安全性も高いことが、米国・オハイオ州立大学心臓血管センターのWilliam T Abraham氏らの検討で明らかとなった。過去30年間、最新の治療法によっても心不全による入院率はほとんど改善されておらず、アメリカでは心不全患者の退院数は1996年の87万7,000例から2006年には110万6,000例に増加している。一方、埋め込み型血行動態モニタリングシステムは心不全患者の入院率を低減するとの仮説を支持する研究結果があるという。Lancet誌2011年2月19日号(オンライン版2011年2月10日号)掲載の報告。

W-IHM装着の心不全関連入院率を評価




研究グループは、埋め込み型無線血行動態モニタリングシステムの導入は心不全患者の入院率を低減するとの仮説を検証するために、単盲検無作為化対照比較試験を実施した。

アメリカの64施設から、NYHAクラスIII心不全、左室駆出率(LVEF)は不問、心不全による入院歴ありの患者が登録された。これらの患者が、6ヵ月以上の期間、埋め込み型の無線血行動態モニタリング(W-IHM)システムによる管理を受ける群あるいは対照群に無作為に割り付けられた。

患者には割り付け情報が知らされなかった。対照群では標準治療のみが施行されたのに対し、W-IHM群は標準治療に加えW-IHMで毎日の肺動脈圧測定が行われた。

主要評価項目は、6ヵ月の時点における心不全による入院率とした。安全性に関するエンドポイントとして、6ヵ月時点でのデバイス/システム関連合併症(DSRC)および圧センサーの故障の評価を行った。

6ヵ月後の入院率:W-IHM群31%、対照群44%




550例が登録され、W-IHM群に270例、対照群には280例が無作為に割り付けられた。6ヵ月時点における心不全関連入院率はW-IHM群が31%(83/270例)と、対照群の44%(120/280例)に比べ有意に良好であった(ハザード比:0.70、95%信頼区間:0.60~0.84、p<0.0001)。

全フォローアップ期間[平均15カ月(SD 7)]を通じた心不全関連入院はW-IHM群が153例であり、対照群の253例に比べ有意に改善されていた(ハザード比:0.64、95%信頼区間:0.55~0.75、p<0.0001)。また、死亡や初回心不全関連入院のイベント数はW-IHM群が107例と、対照群の138例よりも有意に低かった(同:0.71、0.55~0.92、p=0.0086)。

DSRCは8例でみられた。無DSRC率は98.6%であり、これは事前に規定された判定基準値の80%に比べ有意に良好であった(p<0.0001)。圧センサーの故障はなく、無圧センサー故障率は100%であった(事前規定の判定基準値:90%、p<0.0001)。

著者は、「今回の結果はこれまでの知見をさらに拡大するものであり、NYHAクラスIII心不全患者では、W-IHMシステムによる管理で入院率が大幅に低減することが示された」と結論し、「肺動脈圧測定で得られた臨床徴候や症状の情報によって、心不全管理の改善が可能となる」と指摘する。

(菅野守:医学ライター)