世界保健機関(WHO)推定では、世界の10億人以上の成人が過体重であり、少なくとも3億人は太り過ぎとされ、一方で体重、とりわけBMIと健康アウトカムとの関連を広範囲に評価した疫学研究が行われている。それに対し米国ヴァンダービルト大学メディカルセンター疫学センターのWei Zheng氏らは、それら疫学研究の大半はヨーロッパ系のコホート集団で行われたもので、世界人口の60%以上を占めるアジア人全体のBMIと死亡リスクとの関連は明らかになっていないとして、アジアの19のコホート集団110万人以上を対象に、BMIと死亡リスクとの関連を評価するプール解析を行った。NEJM誌2011年2月24日号より。
東アジア人のBMIと死亡リスクとの関連はU字型カーブを示す
解析の対象としたコホート試験は1試験を除き、被験者1万人以上、追跡5年以上の基線にBMIデータを含むもので、平均追跡期間は9.2年、その間に約12万700件の死亡が含まれていた。解析は、交絡因子を補正しコックス回帰モデルを用い行われた。
結果、中国人、日本人、韓国人を含む東アジアのコホート集団においては、BMIが22.6~27.5の範囲で死亡リスクが最も低かった。死亡リスクは、BMIレベルが同範囲より高い人でも低い人でも上昇し、BMIが35.0以上の人で1.5倍、BMIが15.0以下の人では2.8倍だった。
同様のU字型カーブの関係は、BMIとがん並びに心血管疾患、その他の原因による死亡リスクとの間でもみられた。
インド・バングラデシュのコホート集団では、高BMI関連死亡超過リスクは認められず
一方、インド人とバングラデシュ人のコホート集団では、BMIが20.0以下の人はBMIが22.6~25.0の人と比較して、全死因死亡リスクと、がんまたは心血管疾患以外の原因による死亡リスクは増加したが、高BMIと関連する全死因死亡並びに死因別死亡の超過リスクは認められなかった。
これらから研究グループは、「すべてのアジア人集団で、低体重は、死亡リスクの大幅な増加と関連していたとしたが、高BMIと関連する死亡の超過リスクは、東アジア人の集団では認められたが、インド人とバングラデシュ人の集団では認められなかった」とまとめている。
(朝田哲明:医療ライター)