血清ビリルビン値が正常域内では、その値が高い人の方が、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患や総死亡のリスクがいずれも低いことが明らかにされた。英国University College LondonのLaura J. Horsfall氏らが、50万人超を対象に行ったコホート試験で明らかにしたもので、JAMA誌2011年2月16日号で発表した。
肝胆道系疾患や溶血性疾患のない50万人超を中央値8年追跡
研究グループは、1988年1月~2008年12月にかけて、英国プライマリ・ケアに関するデータベース「Health Improvement Network」の中から、血清ビリルビン値の測定記録があり、肝胆道系疾患や溶血性疾患の診断歴のない、50万4,206人についてコホート試験を行った。
主要評価項目は、COPDや肺がんの罹患率と、総死亡率だった。追跡期間の中央値は8年だった。
被験者の血清ビリルビン値の中央値は、男性が0.64mg/dL(四分位範囲:0.47~0.88)で、女性が0.53mg/dL(同:0.41~0.70)だった。
肺がんを発症したのは1,341人(罹患率2.5/1万人・年)、COPDは5,863人(罹患率11.9/1万人・年)、総死亡は2万3,103人(死亡率42.5/1万人・年)だった。
血清ビリルビン値0.1mg/dLごと上昇で、肺がん罹患率は男性で8%、女性で11%減少
血清ビリルビン値が高い方が、男性の肺がん罹患率は低く、低い方から第1番目の十分位群(血清ビリルビン値:0.18~0.34mg/dL)では5.0(95%信頼区間:4.2~6.0)/1万人・年だったのに対し、第5番目の十分位群(血清ビリルビン値:0.58~0.63mg/dL)では3.0(同:2.3~3.8)/1万人・年だった。
同じく男性のCOPD罹患率も、それぞれ19.5(同:17.7~21.4)と14.4(同:12.7~16.2)と、血清ビリルビン値が高い方が低率だった。
また男性の総死亡率も、第1番目の十分位群が51.3(同:48.5~54.2)/1万人・年に対し、第5番の十分位群では38.1(同:35.5~40.8)/1万人・年と低率だった。
同様の傾向は女性についても認められた。
重要な健康指標で補正後、血清ビリルビン値が0.1mg/dLごと上昇により、肺がん罹患率は男性で8%、女性で11%減少した。またCOPD罹患率も、血清ビリルビン値0.1mg/dLごと上昇により男性で6%減少し、総死亡率は3%減少した。COPD罹患率、総死亡率については、女性においても同様の傾向が認められた。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)