世界のプラマリ・ケア研究においては、イギリスとオランダの研究が関連論文の量、質ともに最上位に位置づけられることが、イギリス・ヨーク大学のJulie Glanville氏らの調査で示された。2008年のイギリスの高等教育研究評価(Research Assessment Exercise)では、イギリスのプライマリ・ケア研究の50%は世界水準にあり、国際的に「優良」と評価されているが、各国の研究を直接的に比較した調査はないという。BMJ誌2011年3月12日号(オンライン版2011年3月8日号)掲載の報告。
6ヵ国のプライマリ・ケア関連論文を計量書誌学的に解析
研究グループは、学術研究としてのプライマリ・ケア学が確立している6ヵ国(オーストラリア、カナダ、ドイツ、オランダ、イギリス、アメリカ)から報告されたプライマリ・ケアに関する原著論文の量と質を計量書誌学的解析で評価した。
MedlineおよびEmbaseを用いて、2001~2007年に発表された包括的なプライマリ・ケア関連の論文や著者がプライマリ・ケア研究者である報告を検索した。各国のプライマリ・ケア研究の論文数を比較し、質については引用論文数や引用回数、平均引用スコアで評価した。
論文の86%がイギリスとオランダから、引用率もアメリカに比肩
2001~2007年に6ヵ国から報告されたプライマリ・ケア関連論文は8万2,169編であった。このうち15%(1万2,421編)に相当する論文を無作為抽出してサンプル調査を行ったところ、プライマリ・ケア施設勤務の研究者あるいは研究機関のプライマリ・ケア科所属の研究者が著者である論文は、その40%がイギリスから、46%がオランダからの報告であった。
全論文8万2,169編の8.3%(6,813編)の著者あるいは共著者を141人の研究者が占めており、個々の研究者の発表論文数は12~249編であった。
1回以上引用された論文の80%以上を40人の著者が占めており、そのうちアメリカが16人、イギリスが11人、オランダが10人であった。また、22人の研究者が1回以上引用された論文の90%以上を占めており、その内訳はアメリカ8人、イギリス7人、オランダ5人、カナダ2人であった。
5回以上引用された論文の著者を最優秀研究者とすると、アメリカが5人、イギリスが4人、オランダが2人であった。20回以上引用された論文の著者上位10人を占めたのは、イギリスの6人とアメリカの4人の研究者であった。
著者の生産性や論文の影響力の指標であるHirschインデックスの平均値は、オランダが14、イギリスは13であり、以下アメリカ12、カナダ7、オーストラリア4、ドイツ3の順であった。
著者は、「プライマリ・ケア研究者による論文の量および引用率の国際比較において、イギリスの研究者は一貫して最上位に位置づけられていた」と結論している。
(菅野守:医学ライター)