高齢者への慢性疾患診断の頻度は全米各地で差があり、同頻度が高い地域ほど、疾患同数別にみた致死率は低くなるという逆相関の関連があることが明らかになった。米国・バーモント州退役軍人メディカルセンターのH. Gilbert Welch氏らが、米国高齢者向け公的医療保険のメディケアの受給者515万人超について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2011年3月16日号で発表した。
地域別の重度慢性疾患診断頻度は1人当たり0.58~1.23と格差
研究グループは、2007年にメディケアの出来高払い制プランに加入する、515万3,877人について、全米306地域の病院紹介地域(hospital referral regions:HRRs)別に、1人当たりの重度慢性疾患診断頻度と疾患数別致死率の関係を分析した。調査対象の重度慢性疾患は、がん、慢性閉塞性肺疾患、冠動脈疾患、うっ血性心不全、末梢血管疾患、重度肝疾患、末端臓器疾患を伴う糖尿病、慢性腎不全、認知症の9疾患だった。
結果、9疾患の診断頻度は、最も低いコロラド州グランド・ジャンクション地域で1人当たり0.58、最も高いフロリダ州マイアミ地域で1.23と幅があった。平均診断頻度は0.90(95%信頼区間:0.89~0.91)、中央値は0.87(四分位範囲:0.80~0.96)だった。
診断された疾患数別(0、1、2、3)にみた致死率はそれぞれ、1,000人当たり16人、45人、93人、154人と、疾患数の増加に伴い増大することが認められた。
疾患数1の致死率、診断頻度が高い地域では1,000人当たり38人、低い地域では51人
しかし、地域別の診断頻度別にみると、疾患数別にみた致死率は、地域別診断頻度が高まるほど段階的に低いことが認められた。
具体的には、疾患数が1の人の致死率は、診断頻度が最も低い五分位範囲の地域では1,000人当たり51人だったのに対し、最も高い五分位範囲の地域では1,000人当たり38人だった(相対比率:0.74、95%信頼区間:0.72~0.76)。疾患数が3の人の致死率についても、診断頻度が最も低い五分位範囲の地域では1,000人当たり168人だったのに対し、最も高い五分位範囲の地域では1,000人当たり137人だった(相対比率:0.81、同:0.79~0.84)。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)