スタチンは心房細動を抑制するか?

提供元:ケアネット

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公開日:2011/04/08

 



短期的な試験で示唆されたスタチンの心房細動に対する抑制効果は、長期的な大規模試験の包括的なレビューの結果では支持されないことが、イギリス・オックスフォード大学のKazem Rahimi氏らの検討で明らかにされた。心房細動は最も高頻度にみられる不整脈の一病型であり、加齢とともに増加することが示されている。多くの国では平均余命が延長し、その結果として心不全の発症率が上昇するため、今後、心房細動による世界的な疾病負担が増大する可能性が高い。心臓手術例や除細動施行例に限定されたエビデンスではあるが、スタチンはこれらの患者における心房細動のリスクを3分の1以上も低減する可能性があるという。BMJ誌2011年3月26日号(オンライン版2011年3月16日号)掲載の報告。

既報および未報の無作為化対照比較試験のメタ解析




研究グループは、スタチンによる心房細動のリスク低減効果を評価するために、既報および未報の無作為化対照比較試験のメタ解析を行った。

データベース(Medline、Embase、Cochrane’s CENTRAL)を検索して2010年10月までに報告された試験を抽出した。未報の長期試験のデータは、研究者と連絡を取って入手した。

解析の対象は、スタチン投与群と非投与群、あるいはスタチン高用量投与群と標準用量投与群を比較した無作為化対照試験とし、長期試験の場合は100例以上を対象に6ヵ月以上のフォローアップを行った試験とした。

現時点では推奨されないが、さらなる検討も




既報の13件の短期試験のデータ(4,414例、659イベント)を解析したところ、スタチン治療により心房細動の発症率が39%低下した(オッズ比:0.61、95%信頼区間:0.51~0.74、p<0.001)が、これらの試験間には有意な不均一性(heterogeneity)が認められた(p<0.001)。

一方、スタチンと対照を比較した22件の長期大規模試験(10万5,791例、2,535イベント)では、スタチン治療によって心房細動の発症率が低下することはなかった(オッズ比:0.95、95%信頼区間:0.88~1.03、p=0.24、不均一性:p=0.40)(差の検定:p<0.001)。

7件の高用量群と標準用量群を比較した、より長期の試験(2万8,964例、1,419イベント)においても、スタチンによる心房細動のリスク低減効果のエビデンスは示されなかった(オッズ比:1.00、95%信頼区間:0.90~1.12、p=0.99、不均一性:p=0.05)。

著者は、「既報の短期的な試験で示唆されたスタチンの心房細動に対する抑制効果は、より大規模な既報および未報の試験の包括的なレビューでは支持されなかったため、現時点ではスタチンは心房細動の予防には推奨されない」と結論したうえで、「これらの知見は、一部の患者でみられたスタチンの心房細動抑制効果を排除するものではなく、今後、よくデザインされた無作為化試験を行って検証する価値がある」としている。

(菅野守:医学ライター)