2型糖尿病患者の治療では、ピオグリタゾン(商品名:アクトス)に比しrosiglitazoneで心筋梗塞、うっ血性心不全、死亡のリスクが有意に高いことが、イギリスEast Anglia大学のYoon Kong Loke氏らの検討で示された。rosiglitazoneとピオグリタゾンはいずれもうっ血性心不全のリスクを増大させることが知られているが、虚血性の心血管イベントのリスクはrosiglitazoneのほうが高いと考えられている。しかし、これらチアゾリジン系薬剤の心血管疾患に及ぼす影響の明白な違いは十分には解明されていないという。BMJ誌2011年3月26日号(オンライン版2011年3月17日号)掲載の報告。
チアゾリジン系薬剤の心血管疾患への影響に関する観察試験のメタ解析
研究グループは、チアゾリジン系薬剤(rosiglitazone、ピオグリタゾン)が、2型糖尿病患者における心筋梗塞、うっ血性心不全、死亡に及ぼす影響を評価するために、観察試験の系統的レビューとメタ解析を行った。
データベース(Medline、Embase)を検索して2010年9月までに報告された試験を抽出した。2型糖尿病患者における心血管疾患のリスクに及ぼすrosiglitazoneとピオグリタゾンの影響を直接的に比較した観察試験を解析の対象とした。
変量効果を用いたメタ解析により、チアゾリジン系薬剤の心血管アウトカムのオッズ比を算出した。統計学的な不均一性(heterogeneity)の評価にはI2 statisticを用い、I2 =30~60%の場合に不均一性は中等度と判定した。
心筋梗塞が16%、うっ血性心不全が22%、死亡が14%多い
チアゾリジン系薬剤の投与を受けた約81万人を含む16件の観察試験(症例対照試験4件、レトロスペクティブなコホート試験12件)について解析が行われた。
ピオグリタゾンに比べ、rosiglitazoneは心筋梗塞(15試験、オッズ比:1.16、95%信頼区間:1.07~1.24、p<0.001、I2=46%)、うっ血性心不全(8試験、同:1.22、1.14~1.31、p<0.001、I2=37%)、死亡(8試験、同:1.14、1.09~1.20、p<0.001、I2=0%)の発現率が有意に高かった。
有害なアウトカムが1例の患者に発現するのに要する治療例数(number needed to treat to harm; NNH)の解析を行ったところ、ピオグリタゾンに比べrosiglitazoneでは心筋梗塞が10万人当たり170人多く発現し、同様にうっ血性心不全は649人多く、死亡は431人多く発現することが示唆された。
著者は、「2型糖尿病患者の治療では、ピオグリタゾンに比しrosiglitazoneは心筋梗塞、うっ血性心不全、死亡のリスクが有意に高いことが示された」と結論し、「医師、患者、監督機関はチアゾリジン系薬剤の血糖コントロールにおける有用性とともにこれらの有害作用にも十分に留意すべき」としている。
(菅野守:医学ライター)