肥満高齢者に対しては減量と運動の介入をワンセットで行うことが、どちらか単独の介入をするよりも身体機能の改善が大きいことが、米国・ワシントン大学医学部老年医学・栄養学部門のDennis T. Villareal氏らによる無作為化対照試験の結果、示された。肥満は加齢に伴う身体機能低下の増大や高齢者の虚弱を引き起こすとされるが、肥満高齢者に対する適切な治療については議論の的となっているという。NEJM誌2011年3月31日号掲載報告より。
対照群、ダイエット群、運動群、ダイエット+運動群に肥満高齢者107例を無作為化
試験は、1年間にわたり減量、運動介入の単独もしくは併用の効果を評価することを目的に行われた。試験参加の適格条件は、65歳以上の肥満者(BMI≧30)、座りきり生活、体重が安定(前年の変化2kg未満)、薬物療法が安定(試験前6ヵ月間)、軽度~中程度の虚弱[一部修正を施した身体機能検査(Physical Performance Test)のスコア(0~36、数値が高いほど身体機能は良好)18~32、最大酸素消費量11~18mL/kg体重/分、二つの手段的日常生活活動(IADL)困難、一つの日常生活動作(ADL)困難]だった。
107例が、対照群、体重管理(ダイエット)群、運動群、体重管理+運動(ダイエット+運動)群に無作為に割り付けられ追跡された。
主要評価項目は、一部修正を施した身体機能検査のスコアの変化とした。副次評価項目には、虚弱、身体組成、骨密度、特異的な身体機能、生活の質などの測定を含んだ。
ダイエット+運動群の身体機能改善、最大酸素消費量改善などが最も大きく
試験を完了したのは93例(87%)だった。intention-to-treat解析の結果、身体機能検査スコアは基線から、ダイエット+運動群が21%増で、ダイエット群12%増、運動群15%増よりも変化が大きかった。なおこれら3群は、対照群(1%増)よりはいずれも変化が大きかった(P<0.001)。
また、最大酸素消費量の基線からの変化は、ダイエット+運動群が17%増で、ダイエット群10%増、運動群8%増と比べ改善が認められた(P<0.001)。
機能状態質問票(Functional Status Questionnaire)のスコア(0~36、数値が高いほど機能状態は良好)については、ダイエット+運動群が10%増で、ダイエット群4%よりも変化が大きかった(P<0.001)。
体重の減量は、ダイエット群10%、ダイエット+運動群9%で認められた。しかし運動群や対照群では減量が認められなかった(P<0.001)。
除脂肪体重の減量、股関節部骨密度の低下はいずれも、ダイエット+運動群がダイエット群よりも小さかった(それぞれ3%対5%、1%対3%、両比較のP<0.05)。
ダイエット+運動群では筋力、平衡感覚、歩行機能について一貫した改善が認められた(すべての比較のP<0.05)。
なお有害事象として、少数の運動関連の筋骨格損傷などが認められた。
(武藤まき:医療ライター)