適切な研修を受け国家資格を持つ看護師や助産師などの非医師医療者は、高度な技術が不要な、薬剤を用いた人工妊娠中絶処置を医師がいない状況下で安全に実施可能なことが、世界保健機構(WHO)リプロダクティブ・ヘルス部門のI K Warriner氏らがネパールで実施した調査で示された。毎年、世界で2億1,000万人の女性が妊娠するが、約5人に1人は出産に至らず、そのうち約2,200万人が危険な状態で妊娠を中断しており、そのほとんど(98%)が開発途上国で起きているという。看護師や助産師が、医師がいない状況下でも安全に人工妊娠中絶処置を実施できれば、このような危険は回避可能になると期待されている。Lancet誌2011年4月2日号(2011年3月31日号)掲載の報告。
医師、非医師医療者による人工妊娠中絶処置の同等性を検証
研究グループは、ネパールにおいて、国家資格を持つ看護師や助産師などの非医師医療者による人工妊娠中絶処置の安全性と有効性について、医師が行う場合との同等性を検証する無作為化対照比較試験を行った。
ネパールの5つの地域病院から、妊娠9週(63日)以内で、病院までの所要時間が90分以内の場所に居住する妊婦が登録された。これらの妊婦が、医師(14人、平均年齢42.4歳、女性3人、診療経験14.1年)あるいは非医師医療者(11人、平均年齢41.9歳、全員女性、診療経験21.8年)による人工妊娠中絶処置を受ける群に無作為に割り付けられた。中絶処置は、mifepristone 200mgを経口投与し、2日後にミソプロストール800μgを経膣的に投与した。その後、10~14日間のフォローアップを実施した。
主要評価項目は、30日以内に手動真空吸引法を施行せずに達成された中絶成功率とした。結果は成功、不完全、不成功(妊娠継続)に分類した。
中絶成功率:医師群96.1% vs. 非医師医療者群97.3%、不成功率:1% vs. 0%
登録された1,295人のうち1,077人(医師群535人、非医師医療者群542人)が無作為割り付けの対象となり、1,032人(514人、518人)で解析が可能であった。
中絶成功率は、医師群が96.1%(494/514人)、非医師医療者群は97.3%(504/518人)であった。中絶成功のリスク差は1.24%(95%信頼区間:-0.53~3.02)であり、事前に定義された同等性の範囲(-5~5%)内であった。
中絶不成功率は医師群が1%(5/514人)、非医師医療者群は0%(0/518人)であった。重篤な合併症は両群とも認めなかった。
著者は、「妊娠9週以内の妊婦に対する医師あるいは非医師医療者が行う人工妊娠中絶処置の安全性および有効性は同等であった。適切な研修を受けて国家資格を持つ非医師医療者は、高度な技術を要しない人工妊娠中絶処置を、医師がいない状況下で安全に実施可能である」と結論している。
(菅野守:医学ライター)