子宮摘出歴のある閉経後女性で、エストロゲンを服用(5.9年)し、その後服用を中止した人の追跡10.7年時点における冠動脈心疾患や深部静脈血栓症(DVT)、股関節骨折の年間発生リスク増大との関連は、いずれも認められないことが明らかにされた。米国・Fred Hutchinsonがん研究センターのAndrea Z. LaCroix氏らが、被験者1万人超を対象に行った無作為化プラセボ対照二重盲検試験で、予定より早期にエストロゲン投与を中止した人についての、その後のアウトカムを追跡した結果による。JAMA誌2011年4月6日号で発表した。
エストロゲン投与中止後、約7,600人について3年超追跡
LaCroix氏らは、1993~2004年にかけて、1万739人の子宮摘出歴のある、50~79歳の閉経後女性を無作為に2群に分け、一方には結合型ウマエストロゲン0.625mg/日を、もう一方にはプラセボを投与するWHIエストロゲン単独療法試験(Women's Health Initiative Estrogen-Alone Trial)を開始した。
追跡期間中、エストロゲン群の脳卒中リスク増加が認められたため、試験開始後平均7.1年の時点で投与は中止となった。エストロゲン服用期間の中央値は、5.9年だった。その後、被験者のうち7,645人について、2009年8月まで試験開始から平均10.7年追跡した。
試験期間全体の乳がんリスク、エストロゲン群はプラセボ群の0.77倍
結果、エストロゲン投与中止後の冠動脈心疾患の年間発症リスクは、エストロゲン群が0.64%に対し、プラセボ群が0.67%と、両群で有意差はなかった(ハザード比:0.97、95%信頼区間:0.75~1.25)。
乳がんの年間発症リスクも、エストロゲン群が0.26%、プラセボ群が0.34%(同:0.75、同:0.51~1.09)と有意差はなく、年間総死亡リスクも各群1.47%、1.48%(同:1.00、同:0.84~1.18)と有意差は認められなかった。
服用中止後の脳卒中リスクについても、エストロゲン群0.36%に対しプラセボ群0.41%、DVTリスクも各群0.17%と0.27%、股関節骨折リスクも0.36%と0.28%と、いずれも両群で有意差はみられなかった。
試験期間全体では、乳がんリスクはプラセボ群が0.35%に対しエストロゲン群が0.27%と、有意に低率だった(ハザード比:0.77、同:0.62~0.95)。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)