青年期のBMI高値は、中年となった現在の値が標準とみなされる範囲の値であっても、中年期の肥満関連の疾患の予測因子となるなど、これまで明確にされていなかった青年期から成人期のBMI値と若年成人期の肥満関連の疾患との関連が明らかにされた。米国・ブリガム&ウィメンズ病院内分泌学・糖尿病・高血圧部門のAmir Tirosh氏らが、イスラエル軍医療部隊の定期健診センターを通じて得られたデータを前向きに調査した「MELANY試験」の結果による。NEJM誌2011年4月7日号掲載報告より。
3万7,674例のBMI値の17歳時からの推移と糖尿病、冠動脈心疾患発症を前向きに追跡
MELANY(Metabolic, Lifestyle, and Nutrition Assessment in Young Adults)試験は、イスラエル軍医療部隊の定期健診センターを通じて得られた3万7,674例の外見上は健康な若い男性を対象としたのもので、血管造影で確認された冠動脈心疾患および糖尿病の発症について前向きに追跡された。
部隊で最初に健診が行われたのは被験者が17歳時で、身長および体重が測定され、その後定期的に同測定が行われた。
冠動脈心疾患発症プロセスは糖尿病発症プロセスよりも緩徐であるとの仮説が支持される
平均追跡期間17.4年、約65万人・年追跡において、2型糖尿病発症は1,173例、心血管疾患発症は327例であった。
年齢、家族歴、血圧、生活習慣因子、血中バイオマーカーで補正後の多変量モデル解析の結果、青年期のBMI値(被験者の十分位平均値範囲:17.3~27.6)が高いことは、糖尿病の有意な予測因子となり(最高十分位範囲 vs. 最低十分位のハザード比:2.76、95%信頼区間2.11~3.58)、また心血管疾患の有意な予測因子となる(同:5.43、同2.77~10.62)ことが示された。
さらに成人期のBMIで補正すると、青年期BMIと糖尿病との関連は完全に断ち切られたが(ハザード比:1.01、95%信頼区間:0.75~1.37)、冠動脈心疾患との関連は継続した(同:6.85、3.30~14.21)。
BMI値を多変量モデルにおける連続変数として補正すると、糖尿病と有意な関連は成人期BMI高値のみに認められた(β=1.115、P=0.003、交互作用のP=0.89)。対照的に冠動脈心疾患は、青年期(β=1.355、P=0.004)と成人期(β=1.207、P=0.03)の両時期のBMI高値との独立した関連が認められた(交互作用のP=0.048)。
研究グループは、「青年期のBMI高値は、中年となった現在のBMI値が標準とみなされる値であっても、中年期の肥満関連の疾患の予測因子となる」と結論。また、「糖尿病のリスクは主として診断された時期に近いBMI高値と関連するが、冠動脈心疾患のリスクは青年期と成人期の両時期のBMI高値と関連しており、冠動脈心疾患、特にアテローム性動脈硬化の発症プロセスは糖尿病の発症プロセスよりも緩徐であるという仮説を支持するものである」とまとめている。
(武藤まき:医療ライター)