2001年5月、欧州連合(EU)では、臨床試験の透明性やEU内ハーモナイゼーションを目的とする「EU臨床試験指令」が施行され、EU加盟各国では2004年5月までの国内法整備を義務づけられた。このEU臨床試験指令実施前後における臨床試験数の変化をデンマークで検討したところ、「指令」による臨床試験数減少は認められなかったという研究結果が、BMJ誌オンライン版2007年12月6日付に早期掲載(本誌2008年1月5日号収載)された。筆者はデンマーク医薬品局のLouise Berendt氏らである。
1993年から2005年まで申請数は減少も2006年は一転
Berendt氏らは、1993年から2006年の間にデンマーク医薬品局に申請があった臨床試験記録を調べ、「指令」が国内で施行された2004年前後で、臨床試験数を比較した。
その結果、1993年から2004年にかけては、大学・病院、民間企業いずれによる臨床試験数も減少傾向にあり、2005年まで試験数は減少し続けた。しかし2006年にはいずれのタイプの臨床試験も著明な増加が認められた。具体的には2005年には、1993年の147件から86件にまで低下した大学・病院による臨床試験は、2006年には107件が申請され、民間企業による試験の申請も2005年の174件から2006年は229件まで回復した。
キーはGCP担当部署の存在
「EU臨床試験指令」により制約が増加したにもかかわらずデンマークでは臨床試験が減少していない原因としてBerendt氏らは、大学や主要病院にGCP担当部署が広く存在している点を指摘する。デンマークの大学や大病院にはおよそ2,000のGCP担当チームが存在するが、そのようなシステムがないオーストリアでは「指令」後、臨床試験の著明な減少が認められているためだ。
「GCP担当者をいかに効率よく配置できるかが、大学・病院による質の高い臨床研究維持には重要だ」と同氏らは結論している。
(宇津貴史:医学レポーター)