1996~2007年にかけて、ST上昇型急性心筋梗塞(STEMI)患者に対するエビデンスに基づく治療の導入率が上がるに従い、院内死亡率や30日・1年死亡率が低下していたことが明らかにされた。スウェーデン・カロリンスカ大学病院循環器部門のTomas Jernberg氏らが、同期間にSTEMIの診断を受け治療・転帰などを追跡された「RIKS-HIA」研究登録患者6万人超について調査し明らかにしたもので、JAMA誌2011年4月27日号で発表した。エビデンスベースやガイドライン推奨の新しい治療の実施状況や実生活レベルへの回復生存との関連についての情報は限られている。
再灌流、PCI、血行再建術の実施率、いずれも増大
研究グループは、1つの国で12年間以上追跡された連続患者の新しい治療導入率と短期・長期生存との関連を明らかにすることを目的に、1996~2007年にかけて、スウェーデンの病院で初めてSTEMIの診断を受け、基線特徴、治療、アウトカムについて記録された「RIKS-HIA(Register of Information and Knowledge about Swedish Heart Intensive Care Admission)」の参加者6万1,238人について、薬物療法、侵襲性処置、死亡の割合を推定し評価した。
被験者の年齢中央値は、1996~1997年の71歳から、2006~2007年の69歳へと徐々に若年化していた。男女比は試験期間中を通じて有意な変化はなく、女性が34~35%であった。
エビデンスベースの治療導入率は、再灌流が66%から79%へ、プライマリ経皮的冠動脈インターベンション(PCI)が12%から61%へ、血行再建術は10%から84%へと、いずれも有意に増加した(いずれもp<0.001)。
スタチンやACEなどの薬剤投与率も増大、死亡率は院内・30日・1年ともに低下
薬剤投与についても、アスピリン、クロピドグレル、β遮断薬、スタチン、ACE阻害薬の投与率がいずれも増加していた。具体的には、クロピドグレルは0%から82%へ、スタチンは23%から83%へ、ACE阻害薬もしくはARBは39%から69%へと、それぞれ投与率が増加した(いずれもp<0.001)。
同期間の推定死亡率についてみてみると、院内死亡率は12.5%から7.2%へ、30日死亡率は15.0%から8.6%へ、1年死亡率は21.0%から13.3%へと、それぞれ有意な低下が認められた(いずれもp<0.001)。
補正後、長期にわたる標準死亡率の一貫した低下傾向も認められ、12年生存解析の結果、死亡率は経年的に低下していることが確認された。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)