甲状腺自己抗体を発現する妊婦へのレボチロキシン投与、流産/早産リスクを低減

提供元:ケアネット

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公開日:2011/05/27

 



甲状腺自己抗体の発現がみられる妊婦では、流産および早産のリスクが有意に高く、甲状腺ホルモン製剤レボチロキシン(商品名:レボチロキシンNa、チラーヂン)はこれらのリスクを50%以上も低下させることが、イギリス・ロンドン大学クイーン・メアリー校のShakila Thangaratinam氏らの検討で示唆された。妊娠可能年齢の女性で相対的に発現頻度が高いとされる甲状腺自己抗体は、妊娠の有害転帰を招く可能性があるという。一方、レボチロキシンは妊娠の転帰を改善する可能性が示唆されている。BMJ誌2011年5月14日号(オンライン版2011年5月9日号)掲載の報告。

甲状腺自己抗体と流産/早産の関係をメタ解析で評価




研究グループは、甲状腺機能が正常な女性における甲状腺自己抗体と流産および早産の関係を評価し、レボチロキシンの妊娠転帰への影響を検討するために、系統的なレビューとメタ解析を行った。

データベースを検索して、甲状腺自己抗体と流産および早産に関する文献を収集した。対象集団、診断検査、アウトカムに関する明確な判定基準を事前に定義し、2名のレビュアーがこれを満たす試験を選定した。

データの統合には変量効果モデルを用い、個々の試験のオッズ比(OR)をコホート試験と症例対照試験に分けてプールした。

レボチロキシンの流産/早産抑制効果のエビデンス




甲状腺自己抗体と流産の関連を検討した31試験(コホート試験19件、症例対照試験12件、合計1万2,126人)の30論文、および甲状腺自己抗体と早産の関連を検討した5試験(すべてコホート試験、合計1万2,566人)について解析した。

流産との関係を検討した31試験のうち28試験では、甲状腺自己抗体が流産と関連することが示された。コホート試験のメタ解析では、甲状腺自己抗体の発現により流産のORは3.90(95%信頼区間:2.48~6.12、p<0.001)に達し、症例対照試験のメタ解析ではORは1.80(同:1.25~2.60、p=0.002)と、いずれも有意差を認めた。一方、早産のORは、甲状腺自己抗体の発現に伴って約2倍に上昇した(OR:2.07、1.17~3.68、p=0.01)。

レボチロキシンの流産に及ぼす影響を検討した2つの無作為化試験(合計187人)のメタ解析では、レボチロキシンは流産のリスクを52%有意に低減した(相対リスク:0.48、95%信頼区間:0.25~0.92、p=0.03)。このうち1つの試験(115人)では早産に関する検討も行われ、レボチロキシンは早産のリスクを有意に69%抑制することが確認された(同:0.31、0.11~0.90)。

著者は、「甲状腺自己抗体の発現がみられる妊婦では、流産および早産のリスクとの高度な関連が認められた。レボチロキシン治療が、これらのリスクを有意に低下させる可能性を示唆するエビデンスが得られた」と結論している。

(菅野守:医学ライター)