1990年代半ばに2つの小規模な試験が有望な成績を報告して以来、非小細胞肺癌(NSCLC)に対する術前補助化学療法(neo-adjuvant chemotherapy; NAC)の検討が活発に進められている。6月9日付Lancet誌に掲載されたヨーロッパのIntergroupによる多施設共同無作為化試験の結果は、NACは手術単独に比べ全生存率を改善したものの有意差はなかった。しかし、この最新データを加えたNACの無作為化試験全体の解析によれば、今回の成績は5年生存率を5%引き上げるものだという。英国Addenbrooke’s HospitalのDavid Gilligan氏の報告。
NAC完遂率75%、奏効率49%、病変のdown-stagingは 31%
切除可能なNSCLCが、手術単独群とプラチナ製剤ベースの化学療法を3コース施行後に手術を受けるNAC群に無作為に割り付けられた。NACは、無作為化の前に6つのレジメンの中から主治医が選択した。
1997年7月~2005年7月の間に、ヨーロッパの70施設から519例が登録され、そのうち261例が手術単独群に、258例がNAC群に割り付けられた。stageは Iが61%、IIが31%、IIIが7%であった。NACの完遂率は75%であり、feasibleとみなされた。また、奏効率は49%と良好であり、病変進行は2%にすぎなかった。31%の症例で病変のdown-stagingが得られた。
全生存率の差はないが、最新のエビデンスに強い影響を及ぼす成果
完全切除率は手術単独群80%、NAC群82%と両群間に差はみられなかった。NAC群で術後の合併症が増加することはなく、QOLの低下も認めなかった。また、両群間に全生存率の差はなかった(ハザード比:1.02、95%信頼区間: 0.80-1.31、p=0.86)。生存期間中央値(MST)および5年生存率の推計値は、手術群がそれぞれ55か月、45%、NAC群が54か月、44%であった。
Gilligan氏は、「今回の成績をこれまでのNACの無作為化試験のデータに統合して解析したところ、NACにより12%の相対的な生存ベネフィットが得られ、これは5年生存率の5%の上昇に相当する」と考察を加え、「全生存率に有意差はなかったとはいえ、本試験の成績は最新のエビデンスに強い影響を及ぼすものと思われる」としている。
(菅野 守:医学ライター)