米国で脳卒中後リハビリテーションとして取り入れられるようになっている、体重支持吊り下げ装置付きトレッドミル運動機器を用いた歩行訓練(体重免可トレッドミルトレーニング:BWSTT)の有効性について、理学療法士(PT)による訪問リハビリでの漸進的エクササイズとの比較での無作為化試験が行われた。米国NIHから助成金を受け脳卒中後リハビリの有効性、時期、強度、期間について調査研究をしているデューク大学地域・家庭医学部門のPamela W. Duncan氏らLEAPS(Locomotor Experience Applied Post-Stroke)研究グループが行った。BWSTTは、パイロット試験や小規模臨床試験で効果が示唆されている程度だが商業ベースに乗り導入が増えており、早急な無作為化試験の実施が求められていたという。NEJM誌2011年5月26日号掲載より。
早期BWSTT群、後期BWSTT群、訪問リハ群に割り付け評価
研究グループは、以下を仮定し第3相単盲検無作為化試験を行った。(1)標準的理学療法に加えてのBWSTTは、早期提供(脳卒中後2ヵ月)あるいは後期提供(同6ヵ月)とも1年時点の歩行機能レベルの高い患者の割合が、PTにより脳卒中後2ヵ月に行われる漸進的強度・バランス運動による割合よりも多い。(2)BWSTTの早期実施は同後期実施よりも歩行速度を改善(なぜならパイロット試験で早期の回復程度が最も大きいと示されているから)し、6ヵ月時点までに申し分ないものとなる。
被験者は、脳卒中後2ヵ月未満の408例(62.0±12.7歳、男性54.9%、4,909例を2回のスクリーニングで絞り込んだ)で、歩行障害の程度に応じて中等度(0.4~0.8m/秒歩行可能、53.4%)か重度(<0.4m/秒、46.6%)に階層化し、3つのトレーニング群(早期BWSTT群:139例、後期BWSTT群:143例、訪問リハ群:126例)のいずれかに無作為に割り付けた。各群介入は90分のセッションを週3回、36回(12~16週の間に)行われた。
主要アウトカムは、各群の1年時点の歩行機能改善者の割合とした。
歩行機能改善について3群で有意差なし、歩行速度など改善同程度
1年時点で歩行機能が改善したのは、被験者全体では52.0%だった。
早期BWSTT群と訪問リハ群の改善について有意差はなかった(補正後オッズ比:0.83、95%信頼区間:0.50~1.39)。後期BWSTT群と訪問リハ群についても有意差はなかった(同:1.19、0.72~1.99)。
3群の、歩行速度、運動機能回復、バランス感覚、機能状態、QOLの改善は同程度だった。また、BWSTT介入が遅いことや、初期の歩行障害が重度であることは、1年時点のアウトカムに影響はなかった。
関連する重篤有害事象は10件報告された(早期BWSTT群2.2%、後期BWSTT群3.5%、訪問リハ群1.6%)。軽度有害事象は、訪問リハ群と比較して両BWSTT群で介入期間中、めまいや失神の発生頻度が高かった(P=0.008)。また歩行障害が重度の被験者において複数回転倒する人が、早期BWSTT群で他の2群よりみられた(P=0.02)。
研究グループは「BWSTTが、PT訪問リハでの漸進的エクササイズよりも優れていることは立証されなかった」と結論。「訪問リハのほうがリスクが小さく、適しているといえるかもしれない。また重度歩行障害者に早期BWSTTを行った場合の複数回転倒の割合が高いことは、これら患者には歩行機能改善に加えてバランス感覚を改善するプログラムを組み込むべきであることを示唆するものである」と報告をまとめている。
(武藤まき:医療ライター)