新生児期(生後28日間)の死亡数は全世界で毎年400万人にのぼると推定され、その約75%は生後1週間以内に死亡している。ミレニアム開発目標4(2015年までに5歳未満児の死亡率を1990年の1/3に減少させる)を達成するには、低~中所得国の新生児死亡率を低減する必要がある。Young Infants Clinical Signs Study Groupは、臨床症状や徴候から入院を要する重篤な新生児疾患を検出する簡便なアルゴリズムを開発、Lancet誌2008年1月12日号で報告した。
南アジア、南米、アフリカの6ヵ国が参加
バングラデシュ、ボリビア、ガーナ、インド、パキスタン、南アフリカの保健医療施設に、疾患を有する2ヵ月未満の幼児が生後0~6日の群と7~59日の群に分けて登録された。
トレーニングを受けた保健師が31の症状および徴候を記録し、小児科専門医が個々のケースにつき入院を要する重篤な疾患の評価を行った。個々の症状、徴候の感度、特異度、オッズ比(OR)を算出し、重篤な疾患(黄疸を除く)の予測値を評価するアルゴリズムを確立した。
7つの徴候、症状に基づくアルゴリズムの感度は85%、特異度は75%
生後0~6日群に3,177例が、生後7~59日群には5,712例が登録された。生後1週間における重篤な疾患を予測する症状、徴候として以下の12の項目が同定された。
飲乳困難の既往(OR:10.0)、痙攣の既往(15.4)、虚脱状態(3.5)、刺激時にのみ運動(6.9)、呼吸数60回/分以上(2.7)、うめき声(2.9)、重度の胸部陥凹(8.9)、37.5℃以上の体温(3.4)、35.5℃以下の体温(9.2)、毛細血管再充満時間の延長(10.5)、チアノーゼ(13.7)、四肢の硬直(15.1)。
これらの徴候のうちいずれか1つの発現を求める決定ルールの感度は87%、特異度は74%と高値を示した。おもに個々の徴候、症状の発生率に基づいてアルゴリズムを7つの徴候(飲乳困難の既往、痙攣の既往、刺激時にのみ運動、呼吸数60回/分以上、重度の胸部陥凹、37.5℃以上の体温、35.5℃以下の体温)に絞っても、感度(85%)、特異度(75%)に変化はなかった。また、生後7~59日群においてもこれら7つの徴候は良好な感度(74%)、特異度(79%)を示した。
研究グループは、「本アルゴリズムは簡便であり、保健医療施設に運ばれた0~2ヵ月の幼児において入院を要する重篤な疾患を同定する方法として推奨される」と結論し、「定期の家庭訪問時に新生児の疾患をスクリーニングするには、さらなる検討が必要である」と指摘している。
(菅野守:医学ライター)