心臓または肺移植後1年までの生存率について、手術の実施時刻が日中でも夜間でも同等であることが示された。米国・ジョンズ・ホプキンズ病院循環器手術部門のTimothy J. George氏らが、心臓・肺移植を受けた約2万7,000人について、後ろ向きコホート試験を行って明らかにしたもので、JAMA誌2011年6月1日号で発表した。最近の患者安全に関する組織ベースのアプローチ研究では、夜間の手術は転帰不良に通じると強調されるようになっているが、George氏らは手術時刻と罹患率や死亡率とは無関係であると仮説を立て検証試験を行った。
心臓移植患者約1万7,000人と肺移植者患者約1万1,000人を中央値32.2ヵ月追跡
研究グループは、全米臓器配分ネットワーク(UNOS)のデータベースから、2000年1月~2010年6月にかけて、心臓または肺の移植手術を受けた人、2万7,118人について試験を行った。
被験者のうち、心臓移植を受けたのは1万6,573人で、手術実施時刻が朝7時から夜7時まで(日中群)だったのは8,346人(50.36%)、同夜7時から翌朝7時まで(夜間群)が8,227人(49.64%)だった。肺移植を受けたのは、1万545人で、日中群が5,179人(49.11%)、夜間群が5,366人(50.89%)だった。
追跡期間は中央値32.2ヵ月で、その間に死亡した人は8,061人(28.99%)だった。
術後30日、90日、1年の生存率、日中群と夜間群でいずれも有意差なし
術後30日生存率は、心臓移植・日中群が95.0%、夜間群が95.2%(ハザード比:1.05、95%信頼区間:0.83~1.32、p=0.67)、肺移植・日中群が96.0%、夜間群が95.5%(同:1.22、同:0.97~1.55、p=0.09)と、いずれの移植においても両群で有意差はなかった。
また術後90日生存率についても、心臓移植・日中群が92.6%、夜間群が92.7%(ハザード比:1.05、p=0.59)、肺移植・日中群が92.7%、夜間群が91.7%(同:1.23、p=0.02)と、両群で有意差はなかった。
術後1年生存率も、心臓移植・日中群が88.0%、夜間群が87.7%(ハザード比:1.05、p=0.47)、肺移植・日中群が83.8%、夜間群が82.6%(同:1.08、p=0.19)と、両群で有意差はなかった。
なお、肺移植を受けた人のうち、気道裂開が認められたのは、日中群1.1%に対し夜間群1.7%と、夜間群でわずかな増大が認められた(p=0.02)。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)