新生児CMVスクリーニングに唾液検体リアルタイムPCR法が有用

提供元:ケアネット

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公開日:2011/06/15

 

難聴の重大原因である先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染症の新生児スクリーニングについて、リアルタイムPCR法が有用であることが示された。米国・アラバマ大学バーミングハム校小児科部門のSuresh B. Boppana氏ら研究グループが行った前向き多施設共同スクリーニング研究による。新生児CMV感染症スクリーニングの標準アッセイは出生時に採取した唾液検体による迅速培養法とされているが、自動化ができず大規模スクリーニングに不向きであった。そこでリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)をベースとし、出生時に採取した液体の唾液検体もしくは乾燥させた唾液検体を用いる2種のリアルタイムPCR法が開発された。研究グループはその有用性について検討した。NEJM誌2011年6月2日号掲載報告より。

新生児3万4,989例を対象に前向きスクリーニング研究




2008年6月~2009年11月の間に、米国内7施設で生まれた新生児3万4,989例が、出生時に採取した唾液検体を用いて迅速培養法と2種のリアルタイムPCR法のうち1種以上の検査を受けた。

リアルタイムPCR法の有用性の検証は、第1相群(液体唾液PCR群)と第2相群(乾燥唾液PCR群)の前向き研究にて行われた。第1相群は迅速培養と液体唾液PCRを受けた1万7,662例で、第2相群は迅速培養と乾燥唾液PCRを受けた1万7,327例だった。

感度および特異度、液体唾液PCRは100%・99.9%、乾燥唾液PCRは97.4%・99.9%




結果、全被験児のうち177例(0.5%、95%信頼区間:0.4~0.6)が、3種の検査法のうち1種以上でCMV陽性だった。

第1相群で陽性だったのは93例。そのうち85例(第1相群の0.5%、95%信頼区間:0.4~0.6)は、液体唾液PCR、迅速培養ともに陽性だった。残る8例は、液体唾液PCRは陽性だったが迅速培養は陰性だった。迅速培養との比較による液体唾液PCRの感度は100%、特異度は99.9%であり、陽性適中率は91.4%、陰性適中率は100%だった。

第2相群で陽性だったのは84例だった。そのうち迅速培養陽性は76例(第2相群の0.4%、95%信頼区間:0.3~0.5)だった。うち乾燥唾液PCRも陽性だったのは74例で、2例は乾燥唾液PCR陰性だった。また乾燥唾液PCR陽性だが迅速培養陰性は8例あった。迅速培養との比較による乾燥唾液PCRの感度は97.4%、特異度は99.9%であり、陽性適中率は90.2%、陰性適中率は99.9%だった。

Boppana氏は「液体唾液検体でも乾燥唾液検体でもリアルタイムPCR法は、CMV感染症検出に高い感度と特異度を示した。したがって新生児CMV感染症スクリーニングの強力なツールとなりうるとみなすべきである」と結論している。

(武藤まき:医療ライター)