術前の貧血、赤血球増加症は高齢者の術後死亡リスクを高める

提供元:ケアネット

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公開日:2007/06/26

 

高齢者はヘマトクリット値に異常を来すリスク、および心臓以外の手術で心血管系の合併症を来すリスクが、ともに高いとされている。米国ロードアイランド州プロビデンスにある退役軍人医療センターのWen-Chih Wu氏らのグループは、高齢者の心臓手術以外の手術において、術前の貧血と赤血球増加症が術後30日間に及ぼす影響について評価を行った。JAMA誌2007年6月13日号で報告された結果は、いずれの要因も術後30日間の死亡率、心イベント発生率の増加に関与していることが明らかになったというものだった。

退役軍人約31万人の症例を分析


本調査は「退役軍人省手術の質向上プログラム」のデータベースを使用した後ろ向きコホート研究で、対象者は1997年から2004年にかけて、全米132の退役軍人省所管の医療センターで心臓以外の大手術(鼠径ヘルニア、前立腺切除など)を受けた65歳以上の退役軍人31万311例。

これら対象を術前ヘマトクリット値に基づき、貧血群(39.0%未満)、正常群(39.0~53.9%)、赤血球増加症群(54%以上)の3つのカテゴリーに分け、それぞれの術後30日間の心イベント発生と死亡リスクの増加について評価を行った。

主要評価項目は術後30日間の死亡率、二次評価項目は死亡と心イベント(心停止またはQ波心筋梗塞)の複合エンドポイントとした。

正常範囲を1%下回るごとに死亡率は1.6%ずつ増加


分析の結果、ヘマトクリット値がプラスにしろマイナスにしろ正常範囲から逸脱した場合、術後30日間の死亡率と心イベント発生率はいずれも増加した。しかも、ヘマトクリット値が正常範囲を1%下回るごとに、死亡率は1.6%ずつ増加することが明らかになった。さらに付加的な分析によって、ヘマトクリット値が39%未満に減少するか、もしくは51%を上回った場合、死亡率と心イベントの調整リスクが有意に上昇し始めることが示唆された。

そのためWu氏らは、たとえ軽度であっても貧血または赤血球増加症が、高齢者の術後30日間の死亡率と心イベントの増加をもたらすと結論づけた。同時に、同様の所見が他の集団でも再現されるかどうか、また、貧血や赤血球増加症を術前に治療すれば術後死亡率を減らせるかどうかを調べることが必要だとも述べている。

(朝田哲明:医療ライター)