発熱で外来受診した小児の重篤感染症を診断するための臨床検査値について、英国・オックスフォード大学プライマリ・ヘルスケア部門のAnn Van den Bruel氏らは、システマティックレビューにてエビデンス照合を行った。結果、炎症マーカーのC反応性蛋白(CRP)とプロカルシトニン(PCT)が、診断に有用である可能性が認められた。ただしそれらのカットオフ値については、診断(rule in)と除外診断(rule out)の値が異なることが示され、また、白血球数は重篤な感染症の診断には有用でないことが示されたという。BMJ誌2011年6月11日号(オンライン版2011年6月8日号)掲載報告より。
14研究を対象に、臨床検査値の診断価値を検証
研究グループは、電子データベース、参考文献、専門家によるコンサルテーションにて次の6つの判定基準に基づいて選択された研究を分析し、エビデンス照合を行った。(1)研究デザイン(診断精度や予測ルールの研究)、(2)参加者(健康な生後1ヵ月~18歳の小児および若者を含む)、(3)研究環境(初回治療が外来診療であること)、(4)アウトカム(重篤な感染症)、(5)評価された所見(初回診療について)、(6)記録されたデータ(2×2テーブル作成に十分であること)。
抽出したデータの質評価は、診断精度研究質評価ツール(QUADAS)の判定基準に基づいて行われ、メタ解析が、二変量ランダム効果法と階層化サマリーROC曲線を用いて複数の閾値について検討された。
選定基準に基づき、14研究が選定された。しかし、いずれも方法論的な質が高くなく、また救急治療部もしくは小児科で評価が行われたもので、重篤感染症の罹患率は4.5%から29.3%にわたっていた。
エビデンス照合が行われた臨床検査値は、CRP(5研究)、PCT(3研究)、血沈(1研究)、インターロイキン(2研究)、白血球数(7研究)、好中球絶対数(2研究)、バンド数(3研究)、左方推移(1研究)についてだった。
白血球数は炎症マーカーほど「診断」に有用ではなく、「除外診断」には役立たない
最も診断価値があると認められた臨床検査値は、CRPとPCTだった。CRPに関する二変量ランダム効果メタ解析(5研究、小児1,379例)の結果は、プール陽性尤度比は3.15(95%信頼区間:2.67~3.71)、プール陰性尤度比は0.33(0.22~0.49)だった。
重篤感染症の診断には、PCTのカットオフ値は2ng/mL(2研究、各試験の陽性尤度比は13.7と3.6、それぞれの95%信頼区間は7.4~25.3と1.4~8.9)、CRPのカットオフ値は80mg/L(1研究、陽性尤度比:8.4、95%信頼区間:5.1~14.1)が推奨値として挙げられた。一方で、重篤感染症の除外診断するためのカットオフ値を、PCTは0.5ng/mL、CRPは20mg/L以下とする必要があった。
白血球数の指標は、重篤感染症の診断価値が炎症マーカーよりも低く(陽性尤度比:0.87~2.43)、また除外診断の価値は認められなかった(陰性尤度比:0.61~1.14)。最もパフォーマンスの高い診断決定法(最新独立データセットで検証された)は、CRP、PCTと尿検査の組み合わせで、陽性尤度比は4.92(3.26~7.43)、陰性尤度比は0.07(0.02~0.27)を示した。
これらの結果からBruel氏は、「救急治療部門での炎症マーカー測定は重篤感染症の診断に有用なようだが、臨床医は、診断または除外診断にそれぞれ異なるカットオフ値を用いる必要がある。白血球数の測定は、重篤感染症の診断にはあまり有用ではなく、除外診断には役立たない」と結論。同時に、「臨床検査値の評価のため、プライマリ・ケア設定、バイタルサインを含む臨床診断を含む、より厳密な研究が必要である」とまとめた。