10~24歳の若年人口は、世界的に保健医療の対象としては概して看過されてきたが、障害調整生存年数(disability-adjusted life-years; DALY)で評価した世界疾病負担(global burden of disease)は全人口の15.5%に及ぶことが、世界保健機構(WHO)のFiona M Gore氏らの調査で示された。2008年、世界の10~24歳の若年者人口は18億人を超え、全人口の27%という最大規模の集団を形成するに至った。2032年にはピークに達し約20億人にまで増加すると予測されるが、その90%は低~中所得国の住民だという。最近になって、この年齢層の壮年以降の健康問題や疾患リスク因子の重要性が浮上しているが、世界疾病負担に及ぼす影響は不明だという。Lancet誌2011年6月18日号(オンライン版2011年6月7日号)掲載の報告。
WHOデータを用いて若年者の疾病負担を系統的に解析
研究グループは、若年者における疾病負担の現況およびリスク因子がその負担に及ぼす影響について系統的な解析を行った。
解析には、WHOの「2004年度世界疾病負担研究」のデータを用いた。疾患の罹患率、有病率、重症度、死亡率のデータを基に、10~24歳における原因別のDALYを地域別、低~高所得国別に評価した。
比較リスク評価法(comparative risk assessment method)を用いて、特定の健康リスク因子に起因するDALYを算出した。DALYは、早死による損失生存年数(YLL)と障害による損失生存年数(YLD)に分け、年齢層別、地域別に検討した。
精神神経疾患、不慮の外傷、感染症/寄生虫症がYLDの3大原因
10~24歳の罹患率に関するDALYの総計は約2億3,600万年で、これは全年齢の総DALYの15.5%に相当する。この年齢層ではアフリカのDALYが最も高く、高所得国に比べ約2.5倍に達した(1,000人当たりのDALY:208 vs. 82)。全地域を合わせると、15~19歳の年齢層では男性に比べ女性のDALYが約12%高かった(1,000人当たりのDALY:137 vs. 153)。
世界的にみて、10~24歳の年齢層におけるYLDの3大原因として、精神神経疾患(45%)、不慮の外傷(12%)、感染症/寄生虫症(10%)が挙げられた。この年齢層の罹患率DALYの主なリスク因子は、アルコール飲用(総DALYの7%)、危険な性交渉(同4%)、鉄欠乏症(同3%)、避妊の不履行(同2%)、非合法薬物の使用(同2%)であった。
著者は、「これまで、若年層は比較的健康であるとみなされ、世界的に保健医療の対象としては概して看過されてきた。一方、この年齢層の疾患や外傷の予防機会は十分には活かされていない」とまとめ、「今回のデータは、青少年の健康は保健医療への関心の高まりによって改善される可能性があることを示唆する」と指摘している。
(菅野守:医学ライター)