過去20年の糖尿病患者に占める糖尿病性腎症者の割合は変化なし、背景に糖尿病治療の実施増大?

提供元:ケアネット

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公開日:2011/07/05

 



米国では1988年から2008年にかけて、糖尿病性腎症の有病率が糖尿病有病率に比して上昇し、2.2%から3.3%へと1.1ポイント増加していたが、一方で、糖尿病患者における糖尿病性腎症患者の割合には、変化はみられなかったという。また、血糖降下薬服用者が増加、特にレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)阻害薬の服用者が増加していた。米国・ワシントン大学腎研究所のIan H. de Boer氏らが、「糖尿病性腎症有病率は、糖尿病有病率の拡大により増えるだろうが、糖尿病治療の実施により減少する可能性もある」として、米国における糖尿病性腎症有病率の経時的変化を明らかにするため、全米健康栄養検査調査(NHANES)を元に調べ明らかにしたもので、JAMA誌2011年6月22・29日号で発表した。

糖尿病性腎症の全米有病率は増加、20年前2.2%、10年前2.85%、直近5年は3.3%




糖尿病の定義は、HbA1c値が6.5%以上とし、糖尿病性腎症の定義は、糖尿病で尿中アルブミン/クレアチニン比(ACR)が30mg/g以上のアルブミン尿、糸球体濾過量(GFR)の低下(推定60mL/min/1.73m2未満)のいずれか、または両方が認められる場合とされた。

調査対象は、NHANES III(1988~1994年、n=15,073)、NHANES 1999-2004(n=13,045)、NHANES 2005-2008(n=9,588)。各調査で、糖尿病定義に該当、血糖降下薬を服用のいずれかまたは両方に該当する人は、NHANES IIIは1,431人、NHANES 1999-2004は1,443人、NHANES 2005-2008は1,280人だった。

結果、米国民の糖尿病性腎症有病率は、NHANES IIIが2.2%(95%信頼区間:1.8~2.6)、NHANES 1999-2004は2.8%(同:2.4~3.1)、NHANES 2005-2008は3.3%(同:2.8~3.7)だった(補正前傾向p<0.001)。人口統計学的補正後、NHANES IIIからNHANES 1999-2004への増大は18%増(1.18倍)、NHANES IIIからNHANES 2005-2008は34%増(1.34倍)であった(補正後傾向p=0.003)。これら糖尿病性腎症の有病率は、糖尿病有病率に正比例して増加していた。

一方で、糖尿病患者に占める糖尿病性腎症者の割合に変化は認められなかった。NHANES IIIは36.4%、NHANES 1999-2004は35.2%、NHANES 2005-2008は34.5%、補正後増大はNHANES IIIからNHANES 1999-2004は0.99倍、NHANES IIIからNHANES 2005-2008は0.98倍であった(傾向p=0.77)。

血糖降下薬服用、RAAS阻害薬服用割合がそれぞれ有意に増加




糖尿病患者で血糖降下薬を服用している人の割合は、NHANES IIIの56.2%から、NHANES 2005-2008には74.2%へ、またRAAS阻害薬を服用する人の割合が、同11.2%から40.6%へ、それぞれ有意に増えていた(いずれもp<0.001)。

また同期間では、GFR低下の有病率が14.9%から17.7%へ上昇(p=0.03)し、アルブミン尿は27.3%から23.7%に低下していたが統計学的に有意ではなかった(p=0.07)。

(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)