足痛を有する高齢者への多面的足治療が転倒リスクを低減

提供元:ケアネット

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公開日:2011/07/15

 

 足痛のある高齢者に対する足装具、靴の助言、自宅での足運動プログラム、転倒予防教育用の小冊子などから成る介入が転倒率を有意に低下させることが、オーストラリアLa Trobe大学のMartin J Spink氏らの検討で示された。高齢者の転倒は重大な公衆衛生学的な問題であり、毎年65歳以上の3人に1人が転倒を経験しているという。高齢者の転倒の原因として、視力障害、筋力低下、反応時間の遅延などが挙げられるが、最近、プライマリ・ケアでの診療機会も多い足の障害との関連が確認されている。足の障害に加え、不適切な履き物も身体バランスや歩行を損ない、転倒のリスクを増大させるという。BMJ誌2011年7月2日号(オンライン版2011年6月16日号)掲載の報告。

多面的な足治療の転倒予防効果を評価

 研究グループは、日常動作に支障を生じる足痛のある高齢者の転倒予防における多面的な足治療の有効性を検討するために、並行群間無作為化対照比較試験を実施した。

 2008年7月~2009年9月までに、足痛があり転倒リスクが増大している高齢者305人[平均年齢73.9歳(SD 5.9)、女性211人、男性94人]が登録され、多面的足治療を受ける群(153人、介入群)あるいは通常の足治療を受ける群(152人、対照群)に無作為化に割り付けられた。

 介入群には、足装具、靴の助言、靴の補助金、自宅での足運動プログラム、転倒予防教育用の小冊子、通常の足治療を行い、対照群には通常の足治療のみを施行した。治療期間は両群とも12ヵ月であった。

 ベースラインから12ヵ月後までの転倒者率、複数回転倒者率(2回以上転倒した者の割合)、転倒率(転倒の発生率)、転倒によるけがの発生率を算出した。

介入群で転倒率が36%有意に低下

 試験期間中に264件(介入群103件、対照群161件)の転倒が発生した。12ヵ月の治療を完遂したのは296人で、介入群が147人(96%)、対照群は149人(98%)であった。介入のアドヒアランスは良好で、週3回の運動を75%以上実行した者は52%、装具をほぼ常時装着していたと報告した者は55%に達した。

 12ヵ月後までの転倒率は、介入群が対照群よりも36%有意に低下した(発生率比:0.64、95%信頼区間:0.45~0.91、p=0.01)。転倒者率(相対リスク:0.85、95%信頼区間:0.66~1.08、p=0.19)および複数回転倒者率(同:0.63、0.38~1.04、p=0.07)は両群間に差を認めなかった。

 骨折が介入群で1人、対照群では7人に発生した(相対リスク:95%信頼区間:0.02~1.15、p=0.07)。介入群では、対照群に比べ足関節の強度(足関節外反)、可動域(足関節背屈および内反/外反)、身体バランス(素足時の床上での身体動揺および靴を履いた状態での最大バランス範囲)が有意に改善された。

 著者は、「多面的足治療による介入は、足痛のある高齢者の転倒率を有意に低下させた」と結論し、「介入の個々のコンポーネントは安価で施行法も相対的に簡便であり、ルーチンの足診療や集学的な転倒予防クリニックへの導入の可能性が示唆される」と指摘している。

(医学ライター 菅野 守)