プライマリ・ケアが公正で過不足のない効果的な医療システムの構築に最大限に貢献するにはどうすればよいか……。各国の事情がいかに異なろうと、プライマリ・ケアの役割に関する根本的な命題は同じだ。オーストラリア、ニュージーランド、アメリカの3ヵ国は、プライマリ・ケア医の供給、健康保険によるプライマリ・ケアへの近接性、専門医療へのゲートキーパーとしてのプライマリ・ケア医の役割が大きく異なる。University of California San FranciscoのAndrew B. Bindman氏は、これら3ヵ国のプライマリ・ケアにおける患者構成、診療の範囲、診療時間などを比較検討することで、プライマリ・ケアの将来像を探った。5月15日付BMJオンライン版、6月16日付本誌で掲載された報告。
質問票を用いた合計10万件以上に及ぶcross sectional調査
Bindman氏らは、2001~2002年にオーストラリア、ニュージーランド、アメリカの3ヵ国におけるプライマリ・ケアの診療状況を比較検討するために、患者背景、診断、診療時間などに関する質問票を用いたcross sectional調査を実施した。
オーストラリアは7万9,790件、ニュージーランドは1万64件、アメリカは2万5,838件の外来受診が解析の対象となった。
診断コードはJohns Hopkins expanded diagnostic clustersに準拠し、診療の範囲は疾患に関連する全問題の75%を説明しうるexpanded diagnostic clustersの診断名数として定義された。診療所要時間は医師が記録した外来診療時間などから計算した。
プライマリ・ケア医による診療の多くの局面は各国間でよく類似
プライマリ・ケア医が管理する1回の外来診療ごとの疾患関連問題数は平均1.4件であった。問題の75%を説明しうるexpanded diagnostic clustersの診断名数は、オーストラリアが52、ニュージーランドが57、アメリカは46であった。健康関連問題の頻度は各国間で高い相関を示した。最も大きな違いは診療時間であり、1患者当たりの年間診療時間はアメリカがもっとも短く、オーストラリアの半分、ニュージーランドの1/3であった。
これらの結果を踏まえ、Bindman氏は「3ヵ国はそれぞれプライマリ・ケアの供給および財政の状況が異なるが、プライマリ・ケア医による診療の多くの局面は各国間でよく類似している」と結論している。
(菅野 守:医学ライター)