2型糖尿病患者に対する診断直後からの強化食事療法は、通常治療に比べ血糖値や体重減少、インスリン抵抗性を改善し、糖尿病治療薬の使用量を低減するが、これに運動療法を追加しても新たなベネフィットは得られないことが、イギリス・ブリストル大学のR C Andrews氏らが行ったEarly ACTID試験で示され、Lancet誌2011年7月9日号(オンライン版6月25日号)で報告された。血圧の改善効果は得られなかった。2型糖尿病の管理では、診断直後からライフスタイルの変容を導入すれば予後が改善する可能性があるが、介入の有無で予後の比較を行った大規模試験はないという。
強化食事療法、強化食事/運動療法の血糖値、血圧への影響を評価
Early ACTID(Activity in Diabetes)試験の研究グループは、イギリス南西部地域において、新規2型糖尿病患者に対する診断直後の食事療法と身体活動による介入が、血圧や血糖値に及ぼす影響を評価する無作為化対照比較試験を実施した。
5~8ヵ月前に新規に診断された2型糖尿病患者(30~80歳)が、次の3つの群に2対5対5の割合で無作為に割り付けられた。
・通常治療群(対照群):無作為割り付け時に食事指導と運動の奨励を行い、6ヵ月および12ヵ月後にフォローアップ。
・強化食事療法群:5~10%の体重減少を目標とし、食事療法士による無作為割り付け時、3、6、9、12ヵ月後の食事指導、看護師による計9回(6週ごと)の食事療法の評価、指導と目標設定。
・強化食事/運動療法群:同様の強化食事療法に歩数計を用いた身体活動プログラム(30分以上の早歩きを週5日以上)を併用。
主要評価項目は、6ヵ月後のHbA1c値および血圧の改善とした。
平均HbA1c値が有意に改善、血圧は3群で同等
2005年12月~2008年9月までに593例が登録され、通常治療群に99例(平均年齢59.5歳、男性63%)、強化食事療法群に248例(同:60.1歳、64%)、強化食事/運動療法群には246例(同:60.0歳、66%)が割り付けられ、予後の評価が可能であったのは6ヵ月後が587例(99%)、12ヵ月後は579例(98%)であった。
対照群の平均HbA1c値は、ベースラインの6.72%(SD 1.02)に対し6ヵ月後は6.86%(SD 1.02)とむしろ悪化したが、強化食事療法群は6.64%(SD 0.93)から6.57%(SD 1.06)へ(調整後の対照群との群間差:-0.28%、95%信頼区間:-0.46~-0.10、p=0.0049)、強化食事/運動療法群は6.69%(SD 0.99)から6.60%(SD 1.00)へ(同:-0.33%、-0.51~-0.14、p=0.0009)と有意に改善した。これらの差は、糖尿病治療薬の使用量が減少したにもかかわらず12ヵ月後も持続していた。
体重やインスリン抵抗性についても、介入群で同様の改善効果がみられたが、血圧は3群ともに大きな変化は認めず同等であった。
著者は、「診断直後からの強化食事療法は血糖値を改善するが、これに運動療法を追加しても新たなベネフィットは得られなかった」と結論し、「強化食事療法による介入は食事療法士の支援の下で看護師によって行われるため、地域住民ベースの糖尿病管理サービスに組み込むことも可能であろう」と指摘している。
(医学ライター 菅野 守)