インフルエンザA(H1N1)2009ワクチン接種とギランバレー症候群発症との関連について、ヨーロッパ5ヵ国を対象とした症例対照研究の結果、発生リスクの増大は認められなかったことが報告された。ただしリスク上限が2.7倍以上も否定できないとしている。オランダ・エラスムス大学病院のJeanne Dieleman氏らが、BMJ誌2011年7月16日号(オンライン版2011年7月12日号)で発表した。インフルエンザワクチン接種とギランバレー症候群との関連は、1976年のアメリカでブタ由来インフルエンザA(H1N1)亜型A/NJ/76ワクチンで7倍に増大したことが知られる。その後の季節性インフルエンザワクチンではそこまでの増大は認められていないが、今回新たなワクチン接種が始まり、ヨーロッパでは増大に対する懸念が持ち上がっていたという。
欧州5ヵ国でのワクチン接種とギランバレー症候群発症との関連を調査
多国籍症例対照研究は、デンマーク、フランス、オランダ、スウェーデン、イギリス、約5,000万人を対象に行われた。ギランバレー症候群およびその変異型のミラー・フィッシャー症候群が報告されたのは154例で、そのうち1人以上との対照群とのマッチング(年齢、性、インデックス日付、国)が成立した104例が研究対象となった。症例は、Brighton Collaborationによって分類された。
主要評価項目は、ワクチン接種後のギランバレー症候群の推定リスク。
症例、ワクチン接種については、研究対象国間でかなりのばらつきが認められ、最も共通して接種されたワクチンは、アジュバンドワクチン(PandemrixとFocetria)だった。
関連は認められなかったが、2.7倍以上のリスク上昇の可能性は除外できない
解析の結果、5ヵ国すべての補正前プール推定リスクは2.8(95%信頼区間:1.3~6.0)だった。しかし、インフルエンザ様疾患/上気道感染症と季節性インフルエンザで補正後は、インフルエンザA(H1N1)2009ワクチン接種によるギランバレー症候群増大との関連は認められなかった(補正後オッズ比:1.0、95%信頼区間:0.3~2.7)。ただし95%信頼区間の示す値から、100万人当たり、ワクチン接種後6週間以内で、ギランバレー症候群1例の回避から最高3例発症までの変動があることが明らかになった。
Dieleman氏は、「ギランバレー症候群の発生リスクは、インフルエンザA(H1N1)2009ワクチン接種後に増大しない。しかし一方で、リスク上限が2.7倍あるいは100万人接種当たり3例を上回る可能性は除外できない」と結論。「パンデミックワクチンとギランバレー症候群との関連の評価では、共変量としてのインフルエンザ様疾患/上気道感染症と季節性インフルエンザ、そして接種後時間の影響についての説明が重要である」と述べている。