地域救急医療システムの有効稼働には救急救命士の力が必要

提供元:ケアネット

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公開日:2008/01/30

 

ST上昇型心筋梗塞に対する、冠動脈カテーテル治療(PCI)実施のガイドラインは90分以内とされている。この基準に関して、よく訓練された救急救命士によって指定されたPCI専門センターに直接患者を搬送したほうが、救急治療部の医師が仲介をして転送した場合よりも達成率が高く、PCI実施のための地域体制構築の重要なポイントであることを、カナダ・オタワ大学心臓学研究所のMichel R. Le May氏らが報告した。NEJM誌2008年1月17日号より。

全市的な初回PCIアプローチを開発




ST上昇型心筋梗塞を起こした患者に対してまずPCIを行うことは、血流の再灌流のためには血栓溶解療法より優れており、患者の病院搬入からバルーン処置までの時間(door-to-balloon time)は90分以内に行うべきとされている。

この目標を達成するためには、地域体制をいかに構築するかにかかっていることからMay氏らは、オタワ市において、ST上昇型心筋梗塞を起こしたすべての患者が初回PCIを専門センターで受けられるよう統合的大都市圏アプローチを開発した。そのポイントとして、door-to-balloon timeが、心電図解釈の訓練を受けた救急救命士によって救急現場から直接送り込まれた場合と、救急治療部の医師から転送された場合に差があるかどうかを検証した。

救急救命士による搬入は8割が基準クリア




2005年5月1日から2006年4月30日の1年間に、PCI専門施設に対し初回PCIを実施するよう依頼があったST上昇型心筋梗塞の患者は計344例。救急現場から直接搬入された患者が135例、救急治療部から引き継がれた患者が209例で、初回PCIは全体の93.6%に実行された。

door-to-balloon timeの中央値は、救急現場から搬入された患者は69分(四分位範囲43~87分)で、病院間の搬送が必要だった患者の123分(同101~153分)より短かった(P<0.001)。

ガイドラインの90分以内という基準達成率は、よく訓練された救急救命士が現場でトリアージを行い直接搬送した場合は79.7%、いったん救急治療部に搬送され運ばれた患者では11.9%で、救急救命士によるトリアージ搬送のほうが達成率は高かった(P<0.001)。May氏らは最後に、「救急医療システムの開発には、救急救命士の役割拡大を盛り込むことが必要だ」と提言している。