頸動脈壁内膜中膜厚が心血管アウトカムの予測因子として有用かについて、Framinghamリスクスコアと関連させながら詳細に検討(総頸動脈壁内膜中膜厚、内頸動脈壁内膜中膜厚の別に考慮)した結果、総頸動脈壁内膜中膜厚、内頸動脈壁内膜中膜厚ともに心血管アウトカムを予測したが、Framinghamリスクスコアのリスク分類能を改善するには、内頸動脈壁内膜中膜厚のみ有用であることが、米国・タフツ医療センター放射線部門のJoseph F. Polak氏らにより報告された。同氏らは、頸動脈壁内膜中膜厚をFraminghamリスクスコアに加えることで、同リスク分類が改善されるのではないかと言われてきた仮説を検証した結果による。NEJM誌2011年7月21日号掲載報告より。
Framingham次世代研究2,965例を7.2年間追跡
Polak氏らは、Framingham次世代研究(Framingham Offspring Study)コホート2,965例の総頸動脈壁の平均内膜中膜厚と内頸動脈壁の最大内膜中膜厚を測定し、追跡期間7.2年間の心血管疾患アウトカムについて評価した。多変量Cox比例ハザードモデルにて、内膜中膜厚とリスク因子との関連を評価し、Framinghamリスクスコア分類(低、中間、高)を基準として、内膜中膜厚の因子を追加後に8年間の心血管疾患の再分類がどの程度変わるかを評価した。
被験者の平均年齢は58(SD 10)歳、基線では心疾患歴がなく、55.3%が女性であった。
追跡期間中に報告された被験者初発の心血管イベントは296例であった。
総頸動脈壁の平均内膜中膜厚も予測因子だが、Framinghamリスク分類は改善しない
発生した心血管イベントは、Framinghamリスクスコアにより予測可能であった。C統計量は0.748(95%信頼区間:0.719~0.776)だった。
総頸動脈壁の平均内膜中膜厚を追加後、心血管疾患との関連は有意であったが(1-SD増すごとの補正後ハザード比:1.13、95%信頼区間:1.02~1.24)、C統計量の変化(0.003、95%信頼区間:0.000~0.007)は有意ではなかった。
内頸動脈壁の最大内膜中膜厚を追加後は、心血管疾患との関連は有意で(同:1.21、1.13~1.29)、C統計量の変化(0.009、同:0.003~0.016)はわずかだが有意な上昇が認められた。
ネット再分類指数は、内頸動脈壁内膜中膜厚追加後は有意に上昇したが(7.6%、P<0.001)、総頸動脈壁内膜中膜厚追加後の上昇は有意ではなかった(0.0%、P=0.99)。
内頸動脈壁内膜中膜厚1.5mm超と定義したプラークの存在を追加後のネット再分類指数は7.3%(P=0.01)、C統計量の変化(0.014、同:0.003~0.025)ともわずかだが有意な上昇が認められた。
Polak氏は、「総頸動脈壁内膜中膜厚、内頸動脈壁内膜中膜厚ともに心血管アウトカムを予測するが、心血管疾患のリスク分類を有意に改善するのは、内頸動脈壁の最大内膜中膜厚(およびプラークの存在)のみである」と結論している。
(武藤まき:医療ライター)