早期浸潤性乳がん患者の免疫化学染色法によるSLNまたは骨髄転移検出の意義

提供元:ケアネット

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公開日:2011/08/09

 



早期浸潤性乳がん患者で、センチネルリンパ節(SLN)への転移が認められた人では全生存率は低下しなかったが、骨髄へ微小転移が認められた人は全生存率の低下(補正前ハザード比1.94)が認められたことが明らかにされた。しかし、多変量解析において両部位とも転移検出と生存率とに統計的に有意な関連は認められなかったことも報告された。米国Cedars-Sinai Medical CenterのArmando E. Giuliano氏らが、乳房温存療法とSLN生検を受けた患者5,210人を中央値6.3年間追跡した前向き観察試験の結果で、結論において「両検査の結果は臨床的根拠とならない」とまとめている。JAMA誌2011年7月27日号掲載報告より。

中央値6.3年追跡、免疫化学染色法で骨髄およびSLNへの微小転移を検出




研究グループは、早期浸潤性乳がん患者の生存率と、SLNおよび骨髄標本への免疫化学染色法によって検出される転移との関連を評価することを目的とした。

1999年5月~2003年5月に126ヵ所でAmerican College of Surgeons Oncology GroupのZ0010試験に登録された、早期浸潤性乳がんで乳房温存療法とSLN生検を受けた5,210人について、2010年4月まで中央値6.3年追跡した。

被験者のSLN検体と骨髄検体(手術時の骨髄穿刺は当初は任意で、2001年3月以後は全例に実施された)が中央ラボに送られ、免疫化学染色法により微小転移が調べられ、全生存率(主要エンドポイント)や無病生存期間(副次エンドポイント)について検討された。

SLN検体について、HE染色法が行われた5,119人(98.3%)のうち腫瘍陰性だったのは3,904人(76.3%)だった。免疫化学染色法を行ったのは3,326人で、そのうち腫瘍陽性は349人(10.5%)だった。一方、骨髄検体の免疫化学染色法が行われたのは3,413人で、そのうち腫瘍陽性は104人(3.0%)だった。

追跡期間中、435人が死亡、また376人に再発が認められた。

骨髄への微小転移と全生存率との関連、補正前は有意だが補正後は有意差認められず




解析の結果、SLN転移の免疫化学染色法のエビデンス(5年生存率:転移検出群95.1%、非検出群95.7%、補正前ハザード比0.90、p=0.64)は、全生存率との有意な関連が認められなかった。多変量解析の結果でも有意な関連は認められなかった(補正後ハザード比:0.88、p=0.70)。

一方、骨髄への微小転移は、全生存率の低下との有意な関連が認められたが(死亡に関する補正前ハザード比:1.94、95%信頼区間:1.02~3.67、p=0.04)、多変量解析後は、統計的に有意な関連は認められなかった(同:1.83、p=0.15)。

(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)