第3世代の多断面CT検査は、頭痛発症後6時間以内に施行すれば100%の感度でクモ膜下出血を同定可能なことが、カナダ・オタワ大学救急医療部のJeffrey J Perry氏らの検討で示された。突発性の激しい頭痛は、初発時に神経学的な異常がみられない場合でもクモ膜下出血が疑われる。従来から、CT検査で異常がなくてもクモ膜下出血を除外するために腰椎穿刺が行われるが、逆に、ほとんどの突発性頭痛は良性で自然治癒的(self limiting)であるため詳細な検査は非効率とされ、これが不要な腰椎穿刺の施行につながる場合も多いという。BMJ誌2011年7月30日号(オンライン版2011年7月18日号)掲載の報告。
第3世代CTのクモ膜下出血の検出感度を評価する前向きコホート試験
研究グループは、クモ膜下出血が疑われる救急医療部受診患者における第3世代CT検査(特に頭痛発症後6時間以内の検査)の感度を評価するプロスペクティブなコホート試験を実施した。
試験にはカナダの11の大学付属3次医療教育病院の救急医療部が参加し、2000年1月~2009年12月の期間に行われた。対象は、神経学的に異常がみられず、発症後1時間以内に最高強度に達した急性頭痛の初発患者(15歳以上)で、治療医によりクモ膜下出血を除外するためのCT検査が指示された者とした。
CT検査には、第3世代の多断面CT機器(4~320断面/1回転)が用いられた。クモ膜下出血は、CT画像上のクモ膜下腔の血液像、脳脊髄液中のキサントクロミー、脳血管撮影画像上の異常所見を伴い最後に採取された脳脊髄液中に赤血球が存在する場合と定義された。
6時間以内の感度、特異度、NPV、PPVは100%
登録された3,132例(平均年齢45.1歳、女性60.3%、「人生最悪の頭痛」と答えた患者82.1%)のうち、240例(7.7%)がクモ膜下出血を発症した。
CT検査のクモ膜下出血に対する全体の感度は92.9%(95%信頼区間:89.0~95.5%)であり、特異度は100%(同:99.9~100%)、陰性予測値(NPV)は99.4%(同:99.1~99.6%)、陽性予測値(PPV)は100%(同:98.3~100%)であった。
頭痛発症後6時間以内にCT検査を施行されたのは953例で、このうちクモ膜下出血を発症した121例全例がCT検査で同定された。感度、特異度、NPV、PPVはいずれも100%であった(95%信頼区間は、それぞれ97.0~100%、99.5~100%、99.5~100%、96.9~100%)。
著者は、「第3世代の機器を用いたCT検査は、頭痛発症後6時間以内に施行し、十分な経験を持つ放射線科医が読影を行えば、きわめて高い感度でクモ膜下出血を同定可能である」と結論し、「これらの知見は、CT検査で異常がみられない場合の腰椎穿刺施行の可否に関する臨床的な意志決定に重大な情報をもたらすものと考えられる」と指摘している。
(菅野守:医学ライター)