高血圧患者では拡張障害の結果、心不全発症に至るケースが多いと考えられている。そこでLancet誌6月23日号に掲載されたVALIDD試験では、レニン・アンジオテンシン(RA)系阻害薬を含まない降圧薬とRA系抑制薬の間で、高血圧患者の拡張障害改善作用が比較されたが、有意差はなかった。
試験期間は38週間
本試験の対象は、左室駆出率50%超にもかかわらず心不全が認められた本態性高血圧患者384例。試験開始時の血圧はおおむね144/86mmHgだった。RA系阻害薬とアルドステロン拮抗薬を服用していた患者は服用を停止した上、バルサルタン320mg/日追加群(186例)とプラセボ追加群(198例)に無作為化された。血圧が135/80mmHg未満に達しない場合、RA系抑制薬・アルドステロン拮抗薬以外の降圧薬を自由に追加できた。
拡張能改善作用に有意差なし
二重盲検法にて38週間追跡した結果、1次評価項目である「拡張弛緩速度」はバルサルタン追加群で0.60cm/秒試験開始時に比べ有意(p<0.0001)に増加したが、プラセボ追加群も0.44cm/秒、有意(p<0.0001)に増加したため、両群間の差は有意とならなかった(p=0.29)。
血圧も両群間には有意差はなく、バルサルタン追加群では12.8/7.1mmHg、プラセボ追加群9.7/5.5mmHgの降圧が認められた。
細かく見ると、バルサルタン追加群における拡張能の有意な改善を示唆するデータも得られているが、研究者らは「拡張障害改善には降圧そのものが重要で、降圧薬の種類は問わない」との姿勢を示した。
(宇津貴史:医学レポーター)