全身性強皮症に対する骨髄非破壊的自家造血幹細胞移植(HSCT)は、標準治療に比べ2年間にわたって皮膚病変および肺障害を有意に改善することが、アメリカ・ノースウェスタン大学Feinberg医学校のRichard K Burt氏らの検討で示された。全身性強皮症は、病初期にはびまん性の血管障害を呈し、その後免疫系の活性化に伴って組織の線維化が進む慢性疾患である。HSCTは、非無作為化試験において、全身性強皮症の皮膚症状や肺機能を改善するものの治療関連死の発生率が高いことが示されている。Lancet誌2011年8月6日号(オンライン版2011年7月20日号)掲載の報告。
HSCTの有用性を評価する単施設非盲検無作為化第II相試験
ASSIST(American Scleroderma Stem Cell versus Immune Suppression Trial)試験は、ノースウェスタン記念病院(シカゴ市)で実施された骨髄非破壊的自家HSCTの安全性および有効性を標準治療であるシクロホスファミド(商品名:エンドキサン)療法と比較する非盲検無作為化第II相試験。
対象は、60歳未満のびまん性の全身性強皮症[改訂Rodnan皮膚スコア(mRSS)>14、肺障害、消化器障害などで定義]および限局型(mRSS<14)で肺障害を伴う全身性強皮症患者であった。これらの患者が、HSCT(シクロホスファミド200mg/kg静注+抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリンによる前処置後、末梢血幹細胞を移植)あるいはシクロホスファミド1.0g/m2静注(月1回、6サイクル、対照)を施行する群に無作為に割り付けられた。
主要評価項目は、診断時mRSS>14の患者で12ヵ月後のmRSSの25%以上の低下、あるいは努力性肺活量の10%以上の増加とした。対照群のうち病態が進行した患者は、12ヵ月後にHSCTに切り替えてもよいこととした。
全例で皮膚症状および肺障害が改善
2006年1月18日~2009年11月10日までに19例が登録され、HSCT群に10例(平均年齢:45歳、女性:9例、診断後の平均罹病期間:13.6年、平均mRSS:28、びまん性/肺障害を伴う限局型:8例/2例)、対照群には9例(同:44歳、8例、18年、19、7例/2例)が割り付けられた。
フォローアップ期間12ヵ月の時点で、HSCT群は全例で皮膚病変および肺障害の改善が達成されたのに対し、対照群は全例とも改善が得られなかった(オッズ比:110、95%信頼区間:14.04~∞、p=0.00001)。HSCT群では病態の進行はみられなかったが、対照群の9例中8例は回復期間なしに病態が進行した。対照群のうち7例がHSCTに切り替えた。
フォローアップ期間2年におけるHSCT施行例11例の解析では、ベースラインに比べmRSS(p<0.0001)および努力性肺活量(p<0.03)の有意な改善効果が持続していた。
著者は、「全身性強皮症に対する骨髄非破壊的自家HSCTは、2年間にわたりの皮膚病変および肺機能を改善し、標準治療よりも良好な予後をもたらした。今後は、より長期のフォローアップが必要である」と結論している。無作為化試験で全身性強皮症の肺機能の改善効果が確認されたのは、骨髄非破壊的自家HSCTが初めてだという。
(菅野守:医学ライター)