ラテンアメリカのピロリ菌(Helicobacter pylori)感染患者の除菌治療では、標準的な3剤の14日間投与が、4剤の5日間併用治療や10日間連続治療よりも良好なことが、アメリカFred Hutchinsonがんセンター(シアトル市)のE Robert Greenberg氏らの検討で示された。ヨーロッパ、アジア、北米では、ピロリ菌に対するプロトンポンプ阻害薬+アモキシシリン+クラリスロマイシンによる標準治療は、これにニトロイミダゾールを加えた4剤の5日間併用治療や10日間連続治療よりも除菌効果が有意に低いことが報告されている。4剤レジメンは、3剤レジメンよりも抗生物質の用量が少ないため、医療資源が乏しい環境での除菌計画に適すると考えられる。ラテンアメリカはピロリ菌関連の疾病負担が大きい地域だが、除菌戦略に関する試験は少ないという。Lancet誌2011年8月6日号(オンライン版2011年7月20日号)掲載の報告。
3つの治療法の除菌効果を評価する非盲検無作為化試験
研究グループは、ラテンアメリカ地域におけるピロリ菌の除菌治療として、4剤の5日間併用治療および10日間連続治療の有効性を、標準的な3剤の14日間治療と比較する無作為化試験を実施した。
2009年9月~2010年6月までに、6ヵ国(チリ、コロンビア、コスタリカ、ホンジュラス、ニカラグア、メキシコ)の7地域から尿素呼気試験でピロリ菌陽性と判定された21~65歳の患者が登録された。これらの患者が、ランソプラゾール+アモキシシリン+クラリスロマイシン14日間投与(標準治療)、ランソプラゾール+アモキシシリン+クラリスロマイシン+メトロニダゾール5日間投与(併用治療)、ランソプラゾール+アモキシシリン5日間投与→ランソプラゾール+クラリスロマイシン+メトロニダゾール5日間投与(連続治療)のいずれかを施行する群に無作為に割り付けられた。
除菌効果は、無作為割り付け後6~8週に尿素呼気検査で評価した。治療割り付け情報はマスクされなかった。主要評価項目はピロリ菌除菌率とした。
除菌率:標準治療82.2%、併用治療73.6%、連続治療76.5%
1,463例が登録され、標準治療群に488例が、併用治療群に489例が、連続治療群には486例が割り付けられた。患者背景は3群でバランスがとれていた。
標準治療群の除菌率は82.2%(401/488例)であり、併用治療群の73.6%(360/489例)よりも8.6%(調整後の95%信頼区間:2.6~14.5)高く、連続治療群の76.5%(372/486例)に比べ5.6%(同:-0.04~11.6)高かった。
7つの地域のいずれにおいても、4剤レジメンの除菌率が標準治療よりも優れることはなかった。服薬アドヒアランスや重篤な有害事象の発生率の3群間の差は小さかった。
著者は、「多様なラテンアメリカの地域集団におけるピロリ菌感染の治療法としては、標準的な3剤の14日投与が、4剤の5日間併用治療や10日間連続治療よりも良好であった」と結論したうえで、「特に医療資源の乏しい環境では、治療期間が短く低コストのレジメンが許容されるかもしれない」としている。
(菅野守:医学ライター)