ACE阻害薬最大量で治療中の非糖尿病性腎症患者には、ガイドライン推奨レベルの減塩食を持続して摂らせることが、蛋白尿減少と降圧に、より効果的であることが52例を対象とする無作為化試験の結果、示された。試験は、オランダ・フローニンゲン大学医療センター腎臓病学部門のMaartje C J Slagman氏らが、同患者への追加療法として、減塩食の効果とARB追加の効果とを比較したもので、両者の直接的な比較は初めて。Slagman氏は、「この結果は、より有効な腎保護治療を行うために、医療者と患者が一致協力して、ガイドラインレベルの減塩維持に取り組むべきことを裏付けるものである」と結論している。BMJ誌2011年8月6日号(オンライン版2011年7月26日号)掲載報告より。
ACE最大量投与中にARB and/or減塩食を追加した場合の蛋白尿と血圧への影響を比較
Slagman氏らは、ACE阻害薬最大量服用中の非糖尿病性腎症患者の蛋白尿や血圧への影響について、減塩食を追加した場合と最大量のARBを追加した場合、あるいは両方を追加した場合とを比較する多施設共同クロスオーバー無作為化試験を行った。
被験者は、オランダの外来診療所を受診する52例で、ARBのバルサルタン(商品名:ディオバン)320mg/日+減塩食(目標Na+ 50mmol/日)、プラセボ+減塩食、ARB+通常食(同200mmol/日)、プラセボ+通常食の4治療を6週間で受けるように割り付けられた。ARBとプラセボの投与は順不同で二重盲検にて行われ、食事の介入はオープンラベルで行われた。試験期間中、被験者は全員、ACE阻害薬のリシノプリル(商品名:ロンゲス、ゼストリルほか)40mg/日を服用していた。
主要評価項目は蛋白尿、副次評価項目が血圧であった。
直接対決では減塩食の効果が有意
平均尿中ナトリウム排泄量は、減塩食摂取中は106(SE 5)mmol/日、通常食摂取中は184(6)mmol/日だった(P<0.001)。
相乗平均残存蛋白尿は、ACE阻害薬+通常食では1.68g/日(95%信頼区間:1.31~2.14)であった。
蛋白尿は、ARB追加により1.44g/日(1.07~1.93)まで減少したが(P=0.003)、減塩食追加では0.85g/日(0.66~1.10)まで減少した(P<0.001)。ARBと減塩食の両方追加の場合は0.67g/日(0.50~0.91)まで減少した(P<0.001)。
ACE阻害薬への減塩食追加による蛋白尿減少率は51%(95%信頼区間:43~58)で、ARB追加の場合の同減少21%(同:8~32)よりも有意に大きく(P<0.001)、減塩食とARB両方を追加した場合(62%、53~70)に匹敵するものだった(P=0.009、Bonferroni補正後有意差なし)。
一方、平均収縮期血圧は、ACE阻害薬+通常食では134(SE 3)mmHgであった。
平均収縮期血圧は、ARB追加では有意な変動はみられなかった[131(SE 3)mmHg、P=0.12]が、減塩食追加[123(SE 2)mmHg、P<0.001]、ARBと減塩食を追加[121(SE 3)mmHg、P<0.001]では有意な低下が認められた。
ACE阻害薬への減塩食追加による収縮期血圧低下率は7%(SE 1)で、ARB追加の場合の2%(SE 1)よりも有意に大きく(P=0.003)、減塩食とARB両方を追加した場合(9%、SE 1)と同程度であった(P=0.14)。