高齢女性の睡眠呼吸障害は、軽度認知障害や認知症の発症リスクを1.85倍に増大することが明らかにされた。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のKristine Yaffe氏らが、認知症の認められない高齢女性約300人を対象とする前向き観察試験を行った結果によるもので、JAMA誌2011年8月10日号で発表した。反復性覚醒や間欠性低酸素血症を特徴とした睡眠呼吸障害は高齢者によくみられ、これまでの断面調査で、低い認知能力との関連が示唆されているものの、認知障害発症につながるかどうかについては明らかにされていなかった。
認知症のない高齢女性298人を、平均4.7年追跡
研究グループは、2002年1月~2004年4月にかけて、認知症の認められない高齢女性298人[平均年齢82.3歳(SD 3.2)]について、終夜睡眠ポリグラフィを行い、2006年11月~2008年9月に測定された認知状態(正常、認知症、軽度認知障害)との評価を行った。
睡眠呼吸障害の定義は、睡眠中1時間につき無呼吸・低呼吸指数15以上とし、多変量解析にて、年齢、人種、ボディマス指数、教育レベル、喫煙の有無、糖尿病・高血圧症の有無、薬物療法の有無(抗うつ薬、ベンゾジアゼピン系抗不安薬、非ベンゾジアゼピン系抗不安薬)、基線での認知スコアについて補正を行い、低酸素症、睡眠の分断および持続が、軽度認知障害や認知症の発症リスクと関連しているかを調べた。
追跡期間の平均値は4.7年だった。
認知障害などの発症、睡眠障害のない人では約31%、ある人では約45%
その結果、睡眠呼吸障害の認められない193人では、軽度認知障害や認知症を発症したのは60人(31.1%)だったのに対し、同障害が認められた105人では47人(44.8%)であり有意に高率だった(補正後オッズ比:1.85、95%信頼区間:1.11~3.08)。
また、酸素脱飽和指数の上昇(15回/時以上)や無呼吸・低呼吸時間が睡眠時間の7%超の場合も、いずれも軽度認知障害や認知症の発症リスク増大との関連が認められた。それぞれ補正後オッズ比は1.71(95%信頼区間:1.04~2.83)、2.04(同:1.10~3.78)だった。
一方で、睡眠の分断(覚醒回数/時、覚醒時間を低中高に分類し評価)および睡眠持続時間(総睡眠時間を低中高に分類し評価)についてはいずれも関連が認められなかった。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)