胸膜感染患者には、t-PA(組織プラスミノーゲン活性化因子)+DNase(デオキシリボヌクレアーゼ)併用療法が有効であることが明らかにされた。t-PA療法、DNase療法それぞれ単独では効果が認められなかった。英国・オックスフォード大学のNajib M. Rahman氏らが、210例を対象に多施設共同無作為化二重盲検ダブルダミー試験「MIST2」を行った結果で、併用療法群のみドレナージが改善し、手術処置の減少、入院期間の短縮が認められたという。胸膜感染は30%以上が死亡もしくは手術照会となる。感染体液のドレナージが治療の鍵となるが、初の多施設共同大規模無作為化試験であった胸腔内線維素溶解療法(ストレプトキナーゼ注入)を検討した試験「MIST1」ではドレナージの改善はみられなかった。NEJM誌2011年8月11日号掲載報告より。
210例をプラセボ、併用、各単独の4治療群に無作為化し有効性を検討
Rahman氏らは、胸腔内線維素溶解療法の有効性について、t-PA、DNaseを用いた試験を行った。t-PAの使用は症例シリーズ研究から支持されるもので、DNaseは小規模動物実験で胸膜感染症への可能性が示されていた。
試験は、2005年12月~2008年11月に英国内11施設から登録された210例を対象とし、ダブルプラセボ群、t-PA+DNase併用群、t-PA+プラセボ群、DNase+プラセボ群の、4つの3日間の治療群に無作為に割り付けられた。
主要アウトカムは、胸膜不透明度の変化とされた。測定は、半胸郭における浸出液が占める割合を胸部X線で撮影して測定し、1日目と7日目を比較した。
副次アウトカムは、手術照会、入院期間、有害事象などが含まれた。
胸膜不透明度変化、手術照会、入院期間ともプラセボと比べ有意に改善
結果、胸膜不透明度変化の平均値(±SD)は、プラセボ群の-17.2±19.6%に比べ、t-PA+DNase併用群は-29.5±23.3%、併用群の変化が7.9%大きかった(差異:-7.9%、95%信頼区間:-13.4~-2.4、P=0.005)。
一方、t-PA単独群の変化は-17.2±24.3%、DNase単独群は-14.7±16.4%で、プラセボ群との差は有意ではなかった(それぞれP=0.55、P=0.14)。
また3ヵ月時点の手術照会発生率は、プラセボ群16%であったのに対し併用群は4%で有意に少なかった(オッズ比:0.17、95%信頼区間:0.03~0.87、P=0.03)。一方で、DNase単独群の発生率は39%で、プラセボ群よりも約3.5倍有意な手術照会率の増大が認められた(オッズ比:3.56、95%信頼区間:1.30~9.75、P=0.01)。
入院期間は、併用群がプラセボ群よりも6.7日短縮した(差:-6.7、-12.0~-1.9、P=0.006)。単独群ではいずれもプラセボ群と有意な差は認められなかった。
有害事象については、4群間で有意な差が認められなかった。
(朝田哲明:医療ライター)