高齢者にとって転倒は深刻な健康問題である。最近では転倒による死亡および罹患率の高まりから多因子リスク評価と介入による転倒予防プログラム戦略が提示されている。
ワーウィック大学(イギリス)医科大学校臨床試験部門のS Gates氏らは、システマティックレビューおよびメタ解析によりそれら既存戦略の効果のエビデンスを検討。結果がBMJ誌オンライン版2007年12月18日付け、本誌2008年1月19日号で報告されている。
多因子評価と介入プログラムの効果を検討
分析は、まず6つのデータベース(Medline、Embase、CENTRAL、CINAHL、PsycINFO、Social Science Citation Index)で2007年3月22日までに参照できたプライマリ・ケア、コミュニティまたは救急部門で行われた無作為化および準無作為化対照試験結果を選定。高齢者の転倒および外傷を防ぐための多因子評価と介入プログラムの効果が検討された。
抽出されたデータは、転倒者数、転倒関連の外傷数、転倒率、死亡、病院への入院、保健サービスの利用、施設ケアへの入所、身体活動、クオリティオブライフ。
質の評価には、転倒事実の隠蔽およびブラインド、損失および除外因子、intention-to-treat解析の結果、アウトカムの信頼度が含まれている。
介入効果のエビデンスを見いだせず
解析対象となったのは19のスタディ。このうち18試験の、追跡調査中の転倒の併合リスク比は0.91(95%信頼区間:0.82~1.02)、転倒関連の外傷については(対象は8つの試験)0.90(0.68~1.20)だった。
入院、救急治療部門受診、死亡、あるいは施設ケア入所の間に違いは見られなかった。サブグループ解析の結果、ロケーションの違い、母集団の違い(転倒ハイリスク集団か否か、医師を含めた多職種チーム医療によるケア集団かなど)でも、介入効果のエビデンスを見つけられなかった。
Gates氏は、「能動的介入は、情報提供だけの場合と比べるとより効果がある可能性はある」と各予防戦略について全否定はしていなかったものの、「データは転倒・外傷率を評価するには不十分だったが、それをさしひいても多因子評価の転倒予防プログラムの効果のエビデンスは限定的である」と結論付けている。