プライマリPCI前のエノキサパリン、未分画ヘパリンよりネット臨床ベネフィット提供
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ST上昇型心筋梗塞を呈しプライマリ経皮的冠動脈形成術(PCI)を受けた患者の前処置として、未分画ヘパリンに比べエノキサパリンを投与されていた患者のほうが、ネット臨床ベネフィットが有意であることが報告された。フランス・パリ大学Gilles Montalescot氏らが行った国際無作為化オープンラベル試験「ATOLL」の結果による。直接的な両者の比較はこれまで行われていなかった。Lancet誌2011年8月20日号掲載報告より。
4ヵ国910例を対象に無作為化オープンラベル試験
ATOLL試験は、ST上昇型心筋梗塞でプライマリPCIとエノキサパリンまたは未分画ヘパリンを受けた患者の、虚血性イベントおよび出血イベントの低下について短期的、長期的に追跡する試験。4ヵ国(オーストリア、フランス、ドイツ、アメリカ)64施設から、2008年7月~2010年1月の間にST上昇型心筋梗塞を呈した910例が登録され行われた。
被験者はオープンラベルで無作為に、プライマリPCI前に、エノキサパリンか未分画ヘパリンの0.5mg/kg静脈内ボーラスを受ける群に割り付けられた。患者の選択、割付、治療は可能な限り搬送中に医療チームが、中央無作為化センターと音声連絡を取り合い行われた。無作為化前にすでに抗凝固療法を受けていた患者は試験から除外された。
プライマリエンドポイントは、30日死亡率、心筋梗塞合併症、処置失敗または大出血。主要副次エンドポイントは、死亡・再発性急性冠症候群・緊急血管再生術の複合とされ、intention to treat解析にて評価が行われた。
主なエンドポイントでエノキサパリン有意に低減
プライマリエンドポイントは、エノキサパリン群(450例)126例(28%)、未分画ヘパリン群(460例)155例(34%)で発生した(相対リスク:0.83、95%信頼区間:0.68~1.01、p=0.06)。死亡発生は、エノキサパリン群17例(4%)vs. 未分画ヘパリン群29例(6%)(p=0.08)、心筋梗塞合併症は同20例(4%)vs. 29例(6%)(p=0.21)、処置失敗は同100例(26%)vs. 109例(28%)(p=0.61)、大出血は同20例(5%)vs. 22例(5%)(p=0.79)で、両群間で違いはなかった。
一方、主なエンドポイントは、エノキサパリン群で有意な低減が認められた[30例(7%)vs. 52例(11%)、相対リスク:0.59、95%信頼区間:0.38~0.91、p=0.015]。また、死亡・心筋梗塞合併症・処置失敗・大出血[46例(10%)vs. 69例(15%)、p=0.03]、死亡・心筋梗塞合併症[35例(8%)vs. 57例(12%)、p=0.02]、死亡・心筋梗塞再発・緊急血管再生術[23例(5%)vs. 39例(8%)、p=0.04]のエンドポイントもすべてエノキサパリン群で低減が認められた。
Montalescot氏は、「エノキサパリンは未分画ヘパリンと比べて、虚血性アウトカムを有意に減らした。大出血、処置的成功に違いはなかった。したがって、エノキサパリンは、プライマリPCIを受ける患者にネット臨床ベネフィットという点で改善をもたらした」と結論している。
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