慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者への増悪予防を目的としたアジスロマイシン(AZM)投与は、急性増悪の頻度を減らしQOLを改善することが、プラセボ対照無作為化試験の結果、報告された。米国・コロラド大学デンバー健康科学センターのRichard K. Albert氏らCOPD Clinical Research Networkが、増悪リスクの高い特定の患者1,557例を対象に、標準治療に加えアジスロマイシン250mg/日を1年間投与した結果による。ただし、被験者の一部で聴覚障害が認められたという。NEJM誌2011年8月25日号掲載報告より。
250mg/日を1年間投与
COPDの急性増悪は、死亡リスクの上昇や肺機能の急速な低下はもとより、本人の労働機会を奪い、開業医やER受診、入院機会の頻度を増し治療コストを上昇させる。標準治療〔吸入ステロイド薬、長時間作用性β2刺激薬(LABA)、長時間作用性抗コリン薬〕も頻度は減らすものの、なお年平均1.4回の急性増悪が認められることから、Albert氏らは、種々の炎症性気道疾患に有効なマクロライド系抗菌薬の予防的投与について検討した。
試験対象となったのは、40歳以上のCOPDの増悪リスクは高いが、聴覚障害、安静時頻脈または補正QT間隔延長の著明なリスクはない患者であった。
合計1,577例がスクリーニングを受け、うち1,142例(72%)が、標準治療に加えてアジスロマイシン250mg/日を1年間受ける群(570例)、または同プラセボを受ける群(572例)に無作為に割り付けられた。
試験登録は2006年3月から始まり、1年間投与後2010年6月末まで追跡評価された。
主要アウトカムは、初回急性増悪までの期間。副次アウトカムには、QOL、黄色ブドウ球菌や肺炎レンサ球菌などの鼻咽頭細菌コロニー形成、服薬アドヒアランスが含まれた。
急性増悪の頻度減少、QOL改善も、一部患者で聴覚障害、耐性菌出現の影響は不明
1年間の追跡調査を完了した患者は、アジスロマイシン群89%、プラセボ群90%であった。
初回増悪までの期間の中央値は、アジスロマイシン群266日(95%信頼区間:227~313)に対して、プラセボ投与群は174日(同:143~215)で有意な延長が認められた(P<0.001)。
増悪頻度は、患者・年当たりプラセボ群1.83と比べて、アジスロマイシン群は1.48で(P=0.01)あった。アジスロマイシン群のCOPD急性増悪の年間リスク比は0.73(同:0.63~0.84)だった(P<0.001)。
QOLを評価したSGRQスコア(St. George's Respiratory Questionnaire、評価スコア0~100、低値ほど機能良好)は、アジスロマイシン群のほうが多くの項目でプラセボ群より改善が示された(スコアの平均減少2.8±12.8対0.6±11.4、P=0.004)。
最小有意差とした-4以上の低下が認められた被験者割合は、アジスロマイシン群は43%だった。プラセボ群は36%だった(P=0.03)。
なお聴覚低下の発生が、アジスロマイシン群でプラセボ群よりも、より多く認められた(25%対20%、P=0.04)。
著者は「特定のCOPD患者において、アジスロマイシンは急性増悪の頻度を減らしQOLを改善した。ただし一部患者で聴覚障害が認められた」と結論。一方で「この介入は耐性菌出現パターンが変化する可能性があり、その変化がもたらす影響は不明である」とまとめている。
(朝田哲明:医療ライター)