当初4年、その後6年にわたる住民追跡調査研究の結果、左室拡張能障害の有病率は年齢とともに増加が認められ、その機能低下が心不全の発症と関連していることが、米国・メイヨークリニックのGarvan C. Kane氏らにより明らかにされた。心不全発生率は、年齢とともに上昇が認められるが、その約半分は左室駆出率が保持されている。そうした症例では拡張能障害が発症に関わるが、これまで拡張能の年齢依存性の長期的変化について、住民ベースの研究は行われていなかった。JAMA誌2011年8月24/31日号掲載報告より。
住民追跡研究、拡張能の4年間の経年変化とその後6年間の心不全発生との関連を評価
Kane氏らは、米国ミネソタ州オルムステッドの住民を対象とした追跡調査研究「Olmsted County Heart Function Study」を行った。研究は2つの調査から構成された。
まず、無作為選択された45歳以上の参加者2,042例に対し、臨床的な評価、カルテ記録からの情報抽出、心エコー検査を行い、左室拡張能の程度について、ドップラー検査にて標準、軽度、中等度、重度に等級分類した(研究1:1997~2000年)。
4年後に、同参加者は研究2(2001~2004年)への協力を要請され研究1と同様の検査を受けた。その後、研究2に協力した参加者コホート[研究1後に生存していた1,960例のうち1,402例(72%)が参加]は、新規心不全の発症について2004~2010年の間、追跡された。
主要評価項目は、研究1から研究2の間の拡張能等級の変化と心不全発症の変化とした。
拡張能の低下、65歳以上では2.85倍
研究1と研究2の4年(SD 0.3)の間に、拡張能障害の有病率は、23.8%(95%信頼区間:21.2~26.4)から39.2%(同:36.3~42.2)へと増加していた(P<0.001)。
また、参加者の23.4%(同:20.9~26.0)で拡張能の分類等級が悪化、67.8%(同:64.8~70.6)で不変、改善は8.8%(同:7.1~10.5)であった。拡張能低下と関連していたのは、65歳以上であることだった(オッズ比:2.85、95%信頼区間、1.77~4.72)。
6.3年(SD 2.3)のフォローアップの間の心不全発生率は、拡張能が標準になったか標準を維持した人は2.6%(95%信頼区間:1.4~3.8)、軽度のままだったか軽度へ進行した人では7.8%(同:5.8~13.0)、中程度~高度が持続したか同等級へ進行した人では12.2%(同:8.5~18.4)だった(P<0.001)。
年齢、高血圧、糖尿病、冠動脈疾患補正後、拡張能障害と心不全発症とは相関が認められた(ハザード比:1.81、95%信頼区間:1.01~3.48)。
(武藤まき:医療ライター)