成人の下痢関連溶血性尿毒症症候群(HUS)に対して、早期段階での血漿交換療法が、経過の改善に有用である可能性が示された。デンマーク・オーデンセ大学病院のEdin Coli氏らが報告したもので、Lancet誌2011年9月17日号(オンライン版2011年8月25日号)にて発表された。成人の下痢関連HUSは、急性の溶血性貧血、血小板減少症、腎不全によって特徴づけられ、稀な疾患であるが死亡率は高い。血漿交換療法は死亡率を低下する可能性は示唆されていたが、その有用性については議論の的となっていた。今回示された知見は、南デンマークで2011年5月に発生したO-104集団感染患者への同手技に関する所見をまとめた観察研究の結果である。
年齢中央値62歳5例に行われた血漿交換療法について評価
研究対象は、南デンマークで下痢関連HUSと診断され、連日にわたって血漿交換療法(遠心分離法、新鮮凍結血漿交換法)が行われた患者で、具体的に、2011年5月25~28日の間に、稀なタイプの志賀毒素産生大腸菌(Shiga toxigenic E. coli;STEC)であるO104:H4株に集団感染し、下痢関連HUSを呈した年齢中央値62歳(範囲:44~70歳)の5人の患者だった。
Coli氏らは、便培養法と血清学的試験にて病因を特定し、血漿交換療法による管理が成功したかについて、血小板数、糸球体濾過量(GFR)、乳酸脱水素酵素(LDH)の変化によって評価した。
施行後に血小板数、GFRは上昇、LDHは低下、全例およそ7日後に退院
結果、血漿交換療法後、被験者の血小板数中央値およびGFRは上昇し、LDHは低下、また神経学的状態の改善が認められた。
観血的な下痢発症から血漿交換療法開始までの時間間隔と、血漿交換療法によるLDH低下とは逆相関の関係が認められた(p=0.02)。
全患者とも、血漿交換療法開始後7日(範囲:5~8)で、神経学的状態正常にて退院していた。
一方、本試験のE. coli株について、基質拡張型βラクタマーゼを有し、第三世代のセファロスポリン系薬剤に対し高度耐性化を示したことも確認されている。
Coli氏は、「我々は、HUSの集団発生時における血漿交換療法の評価を行うことができた。そのような評価の無作為化試験は疾患の稀少性から難しいかもしれないが、今回得られた知見に関して無作為化試験で検証する必要はある」とまとめている。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)