ノルウェーでは1996年から2004年にかけて順次、50~69歳女性の乳がん検診としてマンモグラフィ・スクリーニングを導入した。その手術治療への影響について、オスロ大学病院病理学部門のPal Suhrke氏らが検証した結果、手術例が導入前と比べて1.7倍と顕著に増えており、乳房切除術の割合も、マンモグラフィ検診非対象群では減少していたが、50~69歳群では増大し、若年群との比較で約1.3倍の格差があったという。ただし増大は一時的で、時代が下がるにつれ上昇は鈍り、2002年以降は減少に転じていた。Suhrke氏は、「初期の頃の増大要因は過剰診断によるものと思われた。後年に起きた変化は、手術方針の変化によるもののようだ」と分析している。BMJ誌2011年9月17日号(オンライン版2011年9月13日号)掲載報告より。
50~69歳検診対象群の乳房手術、導入前と比べ導入後は70%増
本研究は、ノルウェーのがん登録データを比較解析して行われた。解析されたのは、1993~2007年の間に登録された40~79歳の、侵襲性乳がん3万2,200例と乳管上皮内がん3,208例の計3万5,408例だった。なお2008年現在のノルウェー人口に占める40~79歳女性は100万人である。
解析は被験者を40~49歳、50~69歳、70~79歳各群に分け、それぞれの乳房手術率(乳房切除術+乳房温存療法)と、乳房切除術の割合について調べた。また、マンモグラフィ検診導入前(1993~1995年)から導入期(1996~2004年)、および導入後(2005~2008年)の割合変化について、検診対象群と非対象群とのハザード比を算出して評価した。
結果、50~69歳の検診対象群では、導入前(1993~1995年)から導入後(2005~2008年)の乳房手術の割合が、年間10万人当たり108件から350件へと70%増(ハザード比:1.70、95%信頼区間:1.62~1.78)となっていた。
一方、40~49歳の検診非対象群は、同133件から144件とわずか8%増(同:1.08、1.00~1.16)であり、同じく高齢だが検診非対象群の70~79歳では、同227件から214件へと8%減(同:0.92、0.86~1.00)となっていた。
ステージIの乳房切除術の割合が導入直後に一時的に増大
乳房切除術の割合は、検診対象・非対象群とも、導入前と比べて導入後は減少していたが、50~69歳の検診対象群では、導入前(1993~1995年)から導入期(1996~2004年)の割合が、年間10万人当たり156件から167件へと9%増(同:1.09、1.03~1.14)となっていた。同期間、40~49歳は同109件から91件へと17%減(同:0.83、0.78~0.90)で、結果として、40~49歳群の検診非対象群よりも50~69歳の検診対象群の乳房切除術の割合は31%高かった(同:1.31、1.20~1.43)。
また、50~69歳の検診対象群の手術時の病期についてみたところ、ステージ0、I、IIの乳房手術の割合は対象期間中いずれも増大していた。
ステージIの乳房切除術の割合については、検診導入当初3年間、一時的に増大していた。しかし2002年以降は減少していた。ステージ0とIIに対する乳房切除術も導入期(1996年以降)には増大がみられたが、2003年頃から減少していた。ステージIII、IVに関しては顕著な変化はみられなかった。